金翅鳥院のブログ

天台寺門宗非法人の祈祷寺院です。

大般若理趣分の真読について

当院では聖天さまの浴油供を除くと毎日のほとんどの御祈祷を占めているのが「大般若理趣分」の読誦です。これはもっとも大部の御経である大般若経六百巻のうち、第五百七十八巻にあたります。

よく真言宗でよく読む「理趣経」と勘違いされますが「理趣分」は実はその前身に当たります。「理趣分」それ自体は密教経典ではなく顕教のお経ですがこれを密教的に扱う作法があり、各種の印や真言が「陀羅尼集経」というお経に説かれています。一般によく顕教の寺院などでよく厳修されるのは「転読」と云ってバラバラとお経を扇を広げるように転じる略式の読誦作法です。

これに対して「真読」と云って実際に御経を読むのがこの作法です。
読むだけでなく随所に印明を結んだり口伝の読み方をします。私の師も浴油祈祷のほかは専らこればかり読みました。理由は祈願祈祷には効能がするどく、しかも素早く出るからです。特に断末魔の苦にあえぐ人にはその苦しみを除くのに大きな功徳があるとして古来珍重します。密教の一座行法のように供具の荘厳に時間を取らず、前方便も短いので急ぎの祈願にも直ちに祈祷の三昧に入れます。
また本尊が何尊であれ厳修できるので非常に勝手がいいのです。
勿論、聖天様はじめ諸天尊にあげても最も喜ばれる法楽のひとつであると言われています。

真言宗では経名がよく似た「理趣経」の影になってさほど知られていないようですが、「金華山人」の書かれた名著「鎮宅霊符神」にも理趣分を最も霊験のある御経として読誦を勧めています。天台密教でご祈祷の達者といわれる人たちは例外なく此法を好んで修してきた方が多いようです。