金翅鳥院のブログ

天台寺門宗非法人の祈祷寺院です。

深沙大将

深沙大将は深沙大王ともいいますが、西遊記沙悟浄のモデルだと言われている仏法守護神です。
一般にはあまり知られていない天尊ですが、なぜか私はこの神様がとても好きです。西遊記ならぬ玄奘三蔵の「大唐西域記」には観音を念じて助けを請う三蔵を導いた神として知られています。

故にこの神様は十一面観音の化身であるといいます。モノの本には頭髪赤逆立ち、目は悪鬼の如し、口は血河の如し、牙はオオカミの如しと云います。裸形で体も赤く左手に青蛇をとります。この青蛇は深沙大将が実は一種の龍神であることの証です。足には象の首をそのまま脛当てにして、さらに御腹には童子面があってまるきりモンスター的ですが、この童子面こそが無垢で清浄なこの神の心をあらわすものだそうです。

もっとも悪神の時代もあって生まれ変わり死に変わりしてもお経を取りに来る三蔵の過去世の命は皆この中央アジアの砂漠に住む龍神深沙大将によって奪われていたと言います。彼が首にしている髑髏の瓔珞は実は三蔵の何代にもわたる前世の「されこうべ」です。なぜなら大般若経が東方に伝わるのが惜しいと考えたからだと云われています。
仏法に執着しすぎた魔神です。しかし、この辺はただの悪魔ではない証拠でしょう。

さて、深沙大将一印法という法があります。
元々真言宗にあった法のようですが、叡山文庫にも江戸時代頃の同じ次第がありますので天台にも流布しているようです。ただし、今修している人はいなさそうですね。私は真言宗の朋友から授けてもらって時々修しています。
大般若経守護の神でもあるので理趣分経をよむだけでもよさそうなのですが密立てでする供養がしたかったからです。
「そんなのは真言宗でも拝む人いませんよ。」と云われて笑いながら授けてもらいました。
ご利益は十一面観音のように十種勝利、四種果報といいます。ほかにも色々あるようですが第一は仏法興隆であり、さらに天部のなかでも世間的な祈願のみならず出世間的な祈願ができるのは毘沙門天弁才天そしてこの神沙大将のみと書いた文献もあります。つまりお悟りへと導いてくれるのです。

お悟りとまでは行きませんが拝むと余計な欲が抜け落ちてスッキリします。
拙寺には昔、深大寺さんで頂いてきた神沙大将の軸がありますが、信者さんになかには拝んでいると、その軸から「神様が出てくるのが見える。」という人が二人ほどいてそんな不思議なお話をなさいました。
お軸からちょくちょく出てお働き下さるのでしょうか。

実は今、お像を作ってもらっていますがなかなか思うようには仕上がらぬものであれこれと業者さんに事細かにうるさく御願いしております。