金翅鳥院のブログ

天台寺門宗非法人の祈祷寺院です。

七摩怚里

この季節になる拙寺で出すのがインフルエンザ除け。これは拙寺としてはけっこう好評のお守りですね。
昔インフルエンザが流行って人類がほとんど死ぬかも・・・というオーバーな情報が流れてその時作ったのがこれです。
この御祈祷では十一面観音、大黒天、そして大黒天御眷族の七摩怚里神を祈ります。
この七摩怚里というのは疫病の神。
つまり疫病の神様を味方にして疫病と戦うという逆発想です。
インフルエンザはいってみれば疫病ですからね。
実は別名を七母女天というもので七人の主要な神々の奥方です。女嫌いな童子天の場合だけは単なるガールフレンドでクマリとかコウマリといいます。
北インドでは初潮を迎えぬ少女をこのクマリ神に見立ててお祀りをします。祇園祭の御稚児さんみたいですね。
ロウダリ(自在天妃) ビシュナビ(ビシュヌ天妃) インダリ(帝釈天妃)
バラキミ(ビシュヌの化身、猪神バラーハの妃) チャームンダー(閻魔天妃、元々はシヴァの奥様カーリーの化身) クベイリ(毘沙門天妃かな?)の七人。多少異本によってメンバーが変わりますが、インドでは七ではなくもっぱら八母神です。
でも、七母天曼荼羅では梵天が加わる。これが実は梵天でなく梵天妃だと八母神。だから本当は梵天じゃなく梵天妃なのだと思う。
こうすると八母神がそろいます。そうそうたる方々です。インド神話「女神の偉大さ」はこの八人が阿修羅の軍勢と戦う話。
殺しても殺しても血から再生する阿修羅は不死の存在です。最後には八母神はカーリーを呼んで皆その地を呑んでもらい勝利を得ます。カーリーはやはり大自在天、シヴァの奥さんの最も強烈な姿ですね。
なんで日本では七母神かというと一つの想像ですが、多分、北斗七星信仰と結びついたからでしょうね。彼女たちは大黒天御眷族で、大黒天は北の方に住んでいます。縁日を甲子というでしょ。北の信仰です。
この子というのが方位では北です。北は死の世界でもあるから死の神としての大黒天にはピッタリです。
もともと日本ではクベーラと勘違いされて成立した大黒天。あの福々しい姿は元はネズミならぬマングースを抱くクベーラ神でしょう。
クベーラだとすると日本の大黒天は実は毘沙門天の別バージョンなわけです。

でもここで出てくるのは本家の大黒天、恐ろしい闘争の神であるマハーカーラつまり摩訶伽羅天のことです。
インドではマハーカーラの造像は意外とない。彼は死そのものであるから見れば死ぬんだそうです。因みにインドでは福神の側面は観られません。
死体置き場の屍林にいて秘薬を持ち、人間とその血肉を以て交易するという。だからこの神と交易したら血肉が自然と減ってしまうという。
ダイエットにいいかもしれませんね。(笑)大黒天の持っている槌は実は七母女天の三昧耶形なんですね。
そうなると私的には大黒天は福神のイメージは薄いんです。
摩訶伽羅天のほうを思ってしまうからでしょうね。
でも土地がらみの御祈祷にはとてもよく御力がいただけます。
もともとが堅牢地天と同体ですから。

天台宗では大黒天はとても信仰しますが摩怚里神はあまり拝みません。
何故なら七母神は天台では摩多羅神という別な男性神になってしまったからです。
摩怚里はマートリカーつまり母のことだから男神じゃ変ですけどね。
この神様もやはり「後ろ戸の神」と云って怖いとされてます。
以前、この神様の調査がどこだかの寺院であった。
そしたら最初に出てきたのは木の髑髏。これはシャモンダ天の三昧耶形つまりチャームンダーです。
摩多羅神はチャームンダーだったわけですね。
真言はオンコロコロシャモンダソワカ
七母神はいたって強烈です。
以前、このお守りを黙って霊能者に見せたら「これ、中に食いつきそうな小鬼がいっぱいます!」だと言われました。
なるほど當にそういう神様です。
大変有名な神々の奥方ですが喧嘩する時はやはり鬼みたいなんだろうね。
世間の偉い方の奥方でもそういう人は結構いますから。
真言はオンマウチリビヤクソワカ