金翅鳥院のブログ

天台寺門宗非法人の祈祷寺院です。

お酒がまずくなる宇賀神様

たまたま歓喜団を六個頂いたので、今年まだしていないでいる浴酒供を始めました。
浴酒というのは宇賀神様という金属製の蛇体の神様を酒で湯あみさせるもの。
聖天浴油供と同じく秘法です。
今日からから始めて三座で終わります。つまり歓喜団三対の数です。
それでちょうど縁日の前日に終わる。略式ですけどね。
巳の月.亥の月にやることが多い。今やると亥の月の最後のほうに終わる。
写真は浴酒壇の様子。本尊は宇賀神王です。
宇賀神様って蛇体でお顔が老仙人という不思議な方ですが弁天様の化身とされます。八臂の宇賀弁天には弁天様の頭の上に鳥居があり、その中にこの方がおわします。
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ありていに言えば宇賀之御霊尊でお稲荷さんです。
宇賀弁財天はお稲荷さんと弁天さんのコンビです。
私が伝授受けた時には男の弁天様と思えばよいと言われた。
先に申し上げた通りにこれを温めたお酒で聖天様の浴油のように湯あみさせます。
酒風呂ですね。
私は道場が狭いので浴油でも浴酒でも護摩でも何でもこの壇ひとつでやっています。
ビギンの歌に「オバア自慢の爆弾鍋」というのがあって、沖縄戦の爆弾の破片で作った鍋一つでなんの料理でも自在に作る勇ましい食堂のオバアの歌がありますが、そんな感じ。
何でもかんでもこの壇でします。狭いので他の壇など置けません。
せいぜい施餓鬼壇を外道場に置くくらいかな。

真ん中の宝珠型が宇賀神様の天覆です。
本当はこれをさらにお厨子に収めるんだと思うのだけどね。
上野不忍池の弁天様なんて聖天厨子みたいのあります。
浴酒はお酒が温められてなんか馥郁とした香りが漂い酔いそうな感じです。
伝授阿闍梨様から宇賀神の行するとお酒を断たないと駄目でしょうかと聞いたら、絶たなくてもいいけど・・・お酒がまずくなるよと聞かされましたが、本当でした。特に日本酒がまずくなりますね。
そのせいか弁天行者は大概、日本酒は飲まないようです。
その方もかなりお好きな方なんですけど、そういうのだから本当だろうと思った。
で、本当でした。
今はその味に馴れたけど。最初なんてまずい酒だと思った。銘柄変えて飲みかえても同じ。
おどろきました!
宇賀神様の供物だからかもしれません。
でも心の構造的に言えばたぶん意識が変容するのでしょうね。
でも、そこまで変容が起きればしめたものです。
行として効いてくる。
その阿闍梨様っていきなり七日間断食断水で拝んでしいはじめてしまうような大変すごい方なのですけど、密教の伝授はそういうものなのですね。
本当は。
昔から天部だけは実際に拝んでいる人に習いなさいというけど…そういうだけのことはある。
実はもともと私はお酒に関しては舌が敏感な方ではありませんでした。世間でいうほどにはうまいまずいがあまりわからない。
洋酒は何飲んでもほとんど同じ。違いを意識したことはあえてないんです。
勿論、これはウイスキー、これはバーボン、これはブランデーという区別はわかりますがね。でも、その中でのいい悪いがあんまりぴんと来ない。
だから良いお酒が今一つよくわからない。
ビールなんかもどの銘柄でも同じように感じる。
唯一日本酒だけがうまいまずいがあったけど、それもよくわからなくなりました。
ただ、醸造酒は以前にもまして特にまずいと思う。

でも宇賀神浴酒の最中、酒の香りはすごくよく感じる。
感応道交するのかもしれません。
つまり本尊とシンクロナイズするわけです。それが加持ということ。
でも、それで「ああ、飲みたい!」というのはない。
なんかお酒が飲むものから嗅ぐものになっちゃったようです。
嗅ぐだけで酔う感じ。
たちものではないけど自戒の意味で、人さまのおすすめとお正月、祝賀ごと以外は日本酒はのまないと決めています。
そんなに飲みたいとも思わないし。
のまないでおいてお正月に料理と一緒にやるのが一年の楽しみの一つなのです。