金翅鳥院のブログ

天台寺門宗非法人の祈祷寺院です。

最終テスト

作務がいい加減だと「今のものは壇に上らないと行じゃないと思っているんだね。私なんか根本中堂の雪道掃いて、薬師様から加持力もらったんだけどね。拝みではないよ。」とよく師匠から叱られました。若いうちは家ではごろごろしていて掃除一つロクにしない人間でしたからね。
大変でした。
「仏は見ているんだよ」といつもいわれた。
また、「教えるものなんて何もない。自分で摂るんだよ。」ともいわれた。
中盤のテストは火生三昧。
天蓋護摩21座焚いて熾火に手を入れて術を確かめる。
そしてそのあと祈祷の切紙が許され、形の上の最終テストは精霊供養、七日間で不成仏霊を成仏させて天や浄土に送る。
それで免許皆伝ですが、勿論修行に終わりはない。

ある時、師匠が電話で来てくれという。
お寺にいったらいきなり師が自分をお加持しろという。
「!?」
私、向かい合って五体加持は教わったことないんです。
でも「できるだろ」といわれてやることに。
まあ、今まで何度も見てきたし、加持祭文や不動尊祈り経くらいなら言えますが。
ひと通り終えて「大変失礼いたしました…。」と言って下がったら「ああ、ご苦労さん。楽になった。動けるわ。」といわれた。

今、考えたら「これが本当の最終テストとだったんだなあ・・・」と思います。
後日談で、姉弟子の霊媒祈祷でわかったのは、この時に憑りついていたのは、師匠も知っているある行者さんの霊だったそうです。
もう亡くなってますけど。
生前仲が良くなかったんですが、あることで師に縁ある人がその人のお寺を使うことに…。
「多分、それで怒ってたんだね。今度,彼んとこにお供え持っていくわ。」といっていた。
折れれば済むとこはガチンコしないところが私の師匠の流儀。
勝とうが負けようが戦いはお互いに良いことではありません。
霊の世界も一緒。
私はそう教わってきました。
悪い霊なんかでもどこまでも説得して返そうとする。
術で追い払えないわけじゃないけどそこは最終手段。
しかしながら、今回の師匠の場合はその最終手段をとらないとならなかったんです。

でも今でも「楽になった」というのはホントだったのかなあ?と思う。
師匠のことだからあれは多分本当の最終テストだったかも…。
あの師匠が祓えないものがあるなら私のようなハンパ者がやって退散するとも思えないので…。今でもホントそう思います。