わずかな言葉の端々にも人の性分は表れる。
だとすればうかつな戯言などは到底言えないですね。
達人と言われる人、そこまで言わなくても人間通という人にはそれがわかるものです。
だから言葉は注意して使わないと…ああ、なるほどね、この人はこういうこと言うんだ…という評価を瞬時にされてしまう。
そういう人にかかっては、一見すると評判が良いような人、できる人でも「あいつは駄目だ」と言われる。
なぜかと聞いてもはっきりとは答えてはくれない。
せいぜい「…誠がないな…」とか結論だけを言われるだけ。
人が一瞬見せた顔ですべてを瞬時に見抜かれる。
「そんな、短い言葉で何がわかるというの?わかるわけないじゃない。」という人もあるけど、それは愚かな人の言う屁理屈です。
「言葉尻を捕えて文句つけてるだけじゃないか。不当評価だ。」ともいうけど、言葉尻を捕えられるような人はそれだけでも言葉を大事にしていない人間という証拠なんですね。
まして、短い期間で判ることと時間をかけてわかることはそれぞれ違うものなのです。
ああ、この人は人としての誠がないとか、考えているのは自分のことだけなんだとか…わが師はよく「冗談でも心にないことは出ない」といわれたし、「人にわからぬ冗談は冗談に非ず」ともいわれました。
だから、冗談ひとつ言うにしても心したいものです。
「あ、しまった!」と思ったらもう遅いんです。綸言汗の如し。
全ての災いは口より出づる。
そして「言葉を慎む人」は必ず「身を慎む人」です。
まして、修行者は必ずや言葉を慎まざるべからず…と思います。
「真の言葉」無きものの学べる教えではないでしょう。
十善戒の中の「不妄語、不綺語、不悪口、不両舌、」
いずれも口業です。