金翅鳥院のブログ

天台寺門宗非法人の祈祷寺院です。

ある秋の夜に

もう何年も前の秋の夜のことでした。有楽町駅前のビル地下街である寿司店に入りました。
するとテーブルの端にいた70代くらいの小柄な老紳士が手招きする。
「なんでしょうか?」というと、「いや、あんた。ここにきてちょっと呑まんか。」と言ってお酒を勧めてくれました。
知らない人ですし…どうかとも思いましたが別に断る理由もないので「ではお言葉に甘えて一杯お流れ頂戴…」と一杯いただいた。
話を聞けばどうも石油輸入業界のエライ人の様でした。
色々業界での武勇伝もありそうな現役のお方です。
なかなか一筋縄ではいきそうにない癖のありそうな人なので「いやあ、先生。先生のような方が亡くなったら、さぞ業界の皆さん、喜ぶんじゃないのでしょうか?」というと
「こいつ!言いたいことを言いやがる。いや、いや、だがそうなんだ。あんた、わかるか?」と大喜び。
このくらいの年に成れば男は憎まれてなんぼですからね。
隠居していないのならそうでなきゃいけない。
「おい、大将、こいつになにかいいの食わせてやってくれ。」なんていってね・・・たいそう喜んだ。
それで二人で小一時間も飲んで外に出て、少々酔ってりロレツが回らない言葉でなんだかよくわからない激励をされてさんざ肩をたたかれて別れた。
まだ飲み足りないのか駅と反対の方に歩いて行その人のうしろ姿をみえなくなるまで見送りました。
お互いどこに住んでいるとも知らない。
何を生業としているのかもはっきり語らない。
名前すら名乗らない。
おそらくもう会うことすらない・・・そんな二人で呑んだ秋の夜でした。
 
多分、この人はそれなりの人物でしょう。
思うに男と言わず女と言わずひとかどの仕事してきたら「敵」がないようなものは駄目です。
この人もそういう人。
好々爺で仕事なんかできるか!ですね。
自分も生涯現役でこういう年になったら「あのうるさいジジイ。早く、くたばればいいのに!」と煙たがられ悪口言われるようなそんなジイ様になりたいものだなあ…と思ったものです。