金翅鳥院のブログ

天台寺門宗非法人の祈祷寺院です。

妖怪「美人様」

こんな相談がありました。
蓼科高原にスキーに行った信者さんが夜に夢を見た。
祭壇のところに行者さんらしき人が大勢いる。
何かを拝んでいるようだ。…そこに突然上から真っ黒な球に目玉のついた等身大のものが音を立てて下りてきたそうです。
周りに霧雲のようなものが漂い、真っ黒なオーラを出しているようなそんなような物。
彼女の話を聞く限り水木しげる先生の書いた「ゲゲゲの鬼太郎」に出てくる悪いアメリカの妖怪バッグベアードみたいな感じ。

その人、夢の中だけどもう怖くて吹っ飛んで逃げたそうです。あとで自分なりに調べたら、どうやら蓼科には「美人様」という山神がいるらしいんですが、それって拝んだ方がいいんでしょうか?と聞かれました。

「なんでしょうね。美人様って?」飯縄様に聞くともなく振ると珍しく答えてくれて「妖怪だ。拝まなくてよい。」とのこと。さすが、地理的に近いせいか信濃地方のことはお詳しいですね。飯縄様。
もっとも日本では神と妖怪の区別は栄えているのか落ちぶれているのかの違いです。妖怪から神上がりする者もあれば、堕ちて妖怪になるものもある。
まあ美人様も昔は信仰されてきた山の神かも知れませんね。
最近は拝む人がいないので寂しくなって出てきたのかも…。
ちょっとお気の毒ではあります。

大体、日本の民間信仰では山神は女性ということになっている。嫉妬深い神なので女性は山に入ってはいけないとか、醜い顔なのでオコゼを見せると喜ぶという。自分より醜いから。
だから山に入るなら樵もマタギもオコゼの干物持っていくそうです。
道に迷ったりピンチにあったりしたらそれを出して山神様にお見せする。そうすると活路が開けるという具合。
「美人様」というのもそうやって全く美人とは程遠い姿の山神をなだめる呼称なのでしょうね。おそらく。

どういう訳か私は妖怪?らしき変なものは見ることがありますが幽霊とか見ないですね。この人もそうらしい。多分感覚の及ぶ領域が違うんだね。
海だって深度によって生き物は違うようにそんな構造だと思うんですね。
だから幽霊出るってとこ行っても怖いとは思わないね。出ないというよりわかンないから。怖がりようがない。
私はそうした妖怪は自然を縁として人の念が凝ったもの独り歩きしているんだなと思うんですね。
あ、これ頭おかしい人間のたわごとですのでまじめにとらないように。

まあ、せいぜい500年ほどで比較的新しくできた集合無意識でしょうが、その多くは自然のフィールド中心に地域限定で展開しているので、その手のものはまず家まではやってこない方が多いね。

神使の狐や蛇は元から違う異次元の生き物で人の念うんぬんに関係ない存在。
用事があればどこにでもついてくる。そこはいわゆる妖怪とは違う。
天狗や龍なんかもこちらのタイプですね。前に話した三峰山の眷属、お犬様なんてそうですよね。