金翅鳥院のブログ

天台寺門宗非法人の祈祷寺院です。

大西先生の事5 大天狗吠える


大西先生の得意な霊媒祈祷は私も継承しています。
五体加持といいます。
私の場合は習ったというより、ある日やってみろと言われてやった。
自分も何回も受けているし、憶えていて当然と思われたんでしょう。昔風の教え方はそんなです。
「教えることなど何もない、盗め。」と言われた。
特に修験のものはそうだったですね。
「できません」などというと「いままで私がしてきたのを、見ていなかったの?」といわれる。
怒りはしないけど、呆れられてもうそれでおしまい。
「ああ、やる気ないんだね。」でおしまい。
怒ってまで教えるなんて超親切なことしません。

私も、初めは寄り代の修行したんです。霊媒です。
でも三人いたなかで私が一番駄目だった。修行むにつれてお代はどんどんできにくくなった。
ほかの二人は女性だけどおどろくようなこともやってのけた。それで寄り代じゃなく前座の法を研究しました。

一番初めは、それも師匠が具合悪いのでお前お加持してみろと言われた。それでやってみた。お世辞か知らないけど「おかげで楽になった。」といわれ恐縮しました。
まあ、でもこれって逆に形通りことこまかに教えればできるというもんでもないんで難しいと言えば難しい。まあ、一門の弟子には必修ですので全員教えてはいますが・・・

白戸師匠もある失敗談を話してくれました。
少年時代に大西先生の留守に前座の練習をしていた。寄り代は大西先生の奥さんです。
そうしたらよくない邪霊が出てきたので退散を命じたが相手がなかなか動じない。何を言っても不敵にうす笑っている。
そこで「いなんだら、そこにおれ!」と言って、焦りからやおら大独鈷の印で膝を打ち付けたそうです。
「いたたたた!いぬる。もういぬるから術をといてくれ!」と霊は絶叫する。勿論、霊媒だって痛みを感じます。

ところが苦し紛れの大技が効いたはいいものの納め方がわからない。
どうしても解けない。奥さんはもう痛くて泣き叫んでいるし…しまいに仕方なく自転車飛ばして伯母を迎えにいった。
伯母上はやってくると即座に術を説いて見せた。さすがです。
それで笑って「あんた、あんまり強い術掛けらたいかんよ…」と言われた。
奥さんからは「もうアンタのお代はこりごりだよ」と叱られたそうです。
専門の寄り代はもちろん自分の関連の霊ばかりじゃなくいろんな他人様の相談に関して霊を寄せていくので大変です。
 
くだんの大西先生は大変な験力はあったけど、それでも勝てない霊もいたそうです。
ある時寄り代の奥さんに天狗がおりてきた。
「我は石鎚山の大天狗」と名乗った。
「お前なぞよんでおらん!」ということで大西先生は追い払おうとしましたが一向動じない。
そればかりかカラカラと笑うや、やおら立ち上がって両のこぶしを打ち振るい
道場に据えた大太鼓を小一時間もたたきぬいた。
慌てた先生は秘術を尽くして奥さんから天狗を抜こうとするが終に抜けないで天狗はほしいままに遊んで帰ったそうです。

相当の天狗ですね。こういう術比べを挑む天狗はワシやタカのような動物霊というより元行者の霊が多い。
昔は今とは比較にならないくらいきつい行をした修験者も多かったのでしょうね。
あるいは石鎚山の護法天狗の頂点、法起坊大天狗様だったのかもしれません。
だとしたらちっとやそっとで勝てるわけないですね。超大物天狗ですから。