金翅鳥院のブログ

天台寺門宗非法人の祈祷寺院です。

霊狸

七人みさきの他に私が、師匠からよく話に聞いた四国を代表する妖怪には『霊狸』があります。霊狸とは言わずただタヌキと言っていますが、そこは霊狐をただキツネと言っているのと一緒です。

実は私の弟子で住職している者が母方の家が愛媛県でした。そのお祖父さんがタヌキと将棋挿したりして遊んだと言う…人間の格好で夜に訪ねて来るらしいけど「フニャ」としかしゃべらないそうです。でもこちらの言うことはわかるらしいです。

師匠はよく松山の六角堂というお寺に八ツ俣榎があり、そこに八ツ俣榎大明神と言うのが祀られていて有名なタヌキだと教えてくれました。
これなど神様として祀られていて、著しい霊験で知られ、本地は不動明王とされているそうです。

タヌキは七人みさきのような禍々しい悪魔と違い、私たちの世界に溶け込んだ妖怪と言うか、精霊です。
もちろん動物の哺乳類のタヌキがそんな不思議な存在であるわけはなく、霊狸の象徴的役割を付与された生き物なのでしょうが、そこは意識して分けたりはしてはいない。

私たちの先祖はキツネやタヌキ、あるいはヘビにそうした神性をみてきたのですね。江戸時代の川柳に「弁天様だ。殺すなと母は言い」と言うヘビを謳ったものがあります。

なんだかの本で読みましたが、これも四国の話で、ある病人をご祈祷したらタヌキの仕業とわかった。それで「なぜ、お前はこの人に悪さをするのか?」と聞いたところ、以前葬式があって人が大勢きて面白かった。だからまた葬式を出したいと言うとんでもない話もありました。
タネキには賢愚の差が著しいようです。

やはり四国の香川県にいた私の伯母などは、日露戦争にいった「豆狸」の話を伝えていました。豆狸と言う小さな狸が兵隊さんに化けて、前線で妖術を使い、ロシア兵を散々翻弄して手柄を立てたと言う話で「おとぎ話」でなく「実話」として伝えられてきた話です。
その後、豆狸は無事帰還したという話と惜しくも討ち死にしたという話と二通りラストはあるようです。
こういう話も四国ならではかと思います。