金翅鳥院のブログ

天台寺門宗非法人の祈祷寺院です。

小笠原先生の事


さて白戸師匠は松山市の大西先生のもとを去り、隣国讃岐の金蔵寺に入りました。
金蔵寺天台寺門宗の別格大本山
傘下に円満院、聖護院、実相院の三門跡を失った本宗としては金蔵寺こそが最高の寺格を持つ寺院でした。
ここで一緒だったのが小笠原観念師でした。この人はのちに衰微していた石中寺を本山に独立し石土宗を起こします。

この小笠原師は一種の念力に優れた人物で、ムカデを念力ひとつで動きを止めてしかも殺すこともできたと言う。
白戸師匠もそれを見せられて「白戸さん。できるかい?」と言われ、やってみたら同じようにできたと言う。

この二人以外に金蔵寺では他にできた人はいなかった。
金蔵寺は別格本山だが、当時はそうした呪力に長じた人は他にはなく、火渡りなども他の行者が火の落ちたところを渡るのを尻目に、赤々と火の起きたところをわざと渡って見せた。
「あれは今思うと若気の至りだったなあ」と言われていました。

その後も小笠原先生とは付き合いがあったらしく私も四国遍路中で石土宗の方々と石鎚山の峰入りに行けといわれ、お布施を託されて、ご一緒させていただきました。
この時は瓶ヶ森と言う峰に登り、いわゆる天狗岳と言われている方ではなかった。瓶ヶ森女山とも言われてなだらかです。
ただしこの山を30センチ以上ある鉄の権現像をかわるがわる抱きながら念仏唱えて登るのです。
山上では背中にゴシゴシ権現様を当ててもらいお加持をしてもらいます。
ご本尊が鉄のためか石鎚の行者は大概金属の蔵王権現石鎚山権現としてお祀りします。
安心していたら子持権現山というソフトクリームみたいな隣山につれていかれ行きも帰りも全て鎖一本の山で、後にも先にもあんな怖い山はありませんでしたね。(笑)

ムカデ止めたり、殺す術は師匠から一応私も教わりましたが、私のような凡人にはこれはできませんでした。

師匠の話では「ムカデを殺すのは殺生だが、こうした生殺与奪の力が細菌性の病などでは必要だ」と言われていました。
実際、細菌性免疫不全なども陰性に変えるようなことも師匠の祈祷ではありました。
要するに細菌を調伏して殺すのです。
師匠の場合はそれはこの時の修練によるものらしいです。

さて白戸師匠はここ金蔵寺で正規の加行をしましたが、それが終わるとやがてはまた次の修行の地を目指して金蔵寺を去ったのでした。




続く