金翅鳥院のブログ

天台寺門宗非法人の祈祷寺院です。

窮鳥、懐に入らば


門司で砂防ダムに落ちた猪に日本中の注目が集りました。

最初は「野生動物保護管理法」がどうのとか言って手を出さなかった北九州市も重い腰を上げて猪救出に方向を変えた。

猪は田畑を荒らす害獣という側面もあり助けることに疑問の向きもあったと思います。
然しながらそれ以上に日本中の多くの人々がこの猪救出を望んだという事実。
ここに私は日本型感性の美しさを見るのです。
たとえ害獣であれ。犬、猫であれ、なんであれ困っていれば窮状に情けをかけてまず助ける。
いつの日か、被害対策に山に入り鉄砲で同じ猪を駆除することになろうともそれはそれ。

武士の情けといってっもいいでしょう。
それこそが「日本的感性」だと私は思う。

「窮鳥懐に入れば猟師もこれを撃たず」という言葉がある。

鳥獣を撃って生活している猟師さえも、弱って窮状にある鳥が家に飛び込んでくればこれを助けるのだということです。
弱みに付け込んでこれ幸いと息の根を止めるというのはよろしくない。

ここに我々は他者の不幸を喜ぶという卑しい心を身に着けない工夫をしてきたのだと思う。
だから中国がいかに日本を悪く言おうが四川大地震では私も寄付をした。
それが日本人の流儀だからだ。
どこかの国のように「東北大震災はざまあみろだ。いい気味だ。」などと悪しざまに言うのは実は自分のなかの人としても尊嚴を傷つけているのと同じだからです。
ネットの匿名の悪口も同じ。自分自身を卑しむのと同じ愚行です。
たとえどんな人でも匿名で悪口雑言を書いて誹謗するような卑しい行為の人とは付き合いたくない。
その人がどんなに私に良くしてくれてもです。
反対意見を言うにも名乗りを上げて挑んでくる人の方が好きです。

猪が助かったことは嬉しいが、日本中の人の中にそうした「日本の感性」が生きていることが分かった!それがまたうれしいじゃないですか。
当初、私も猪を放置するという北九州市に苦情メールを出した。勿論、名のって。
そして先ほど感謝のメールをうちました。
「ありがとう。御市が護られたは猪の命、そして善き日本人の感性です。」