金翅鳥院のブログ

天台寺門宗非法人の祈祷寺院です。

誠意は必ず通じる?

今日の分の浴油祈祷終わって税理士の先生おいでになり。そのあとで関先生(仏師)のところへ参考仏画を引き取りに、また准胝仏母の出来具合を拝見してきました。いい感じです。

その後は歌舞伎座関係の信者さんに頂いていた歌舞伎の招待チケットを頂いていたので弟子を伴い拝見しました。
内容は最後の出し物「名月八幡祭り」が印象的。
舞台は江戸深川。いわゆる「世話物」です。

お話はうれっこだけどヒモ付きのお金にルーズな芸者・美代吉とそれにお熱のまじめな越後のちりめん屋・新助、そしてヒモ男の船頭の三次の三角関係。
ちりめん屋の新助は彼女が好きなあまり、お金に困っている美代吉の危機に奔走して家も畑もすべて売り払って、夫婦約束するが、別口で彼女にはお金ができてしまい新助の約束はホゴにされる。
かわいそうな新助は全財産を失い、最後には発狂して八幡祭りの晩に美代吉を切り殺してしまうのです。
なんかまるきり八幡宮のこの前の斬り合い事件のようです。
最近、私的にも八幡宮急接近です。

酷いのは芸者とそのヒモの様に思うだろうだけど・・・ちりめん屋にも重大な間違いがある。
その間違いとは惚れたはれたと誠実さは別ということ。
人は誠意を貫く人は尊敬するかもしれないけど、人に恋慕の情をいだけるか否かはまた全く別です。

まして新助の誠実さは美代吉にしか向いていない。実家の田畑や家を失い、彼の親や兄弟はいったいどうするの。
それがわからない。ただの自分勝手。
彼氏、彼女のためなら・・・と思い切り無茶もする。
で、そんな無茶されちゃかえってうざったいと思われ、敬遠されるんですね。
そりゃそうだよね。不気味だわ。尋常じゃない。
誠意の押し売りは駄目。まして恋心は別というのがわかっていないのが新助のミス。

こういう場合の誠意は恋心が先にあれば大いに評価があがるけど、誠意だけだと具財の入っていない鍋を煮立てるのと同じ感じ。此処大きいポイントだと思う。熱くなるのは鍋ばかり。

まして難儀を救ってもらえばありがたいけど、交換条件を付けては目的ありきで誠意とはいいがたい。実質、金の力で人を縛ろうとするのと何も変わらなくなる。
相手は嫌がるに決まってる。
事実、美代吉は田畑屋敷を売り払ってまでお金を出してくれる新助よりも、金の無心の絶えない、ろくでなしのヤクザな船頭の三次のほうを見限れない。

私も仕事上、相談暦長いからそういうのわかっていない自称誠意の人は沢山見てきた。本当に誠意ある人は無茶しません。交換条件なんて言わない。
だから、新助のようになるのは正しい誠意ある人ではない。悪しつこいだけ。

「なんで私のこの誠意がわかってもいらえないの?」っていうけど、恋愛で大事なのはハッキリ言ってそういう押し売りの誠意なんかじゃない。

そのうえ、いくら好きでも対等でないときっとおかしくなるもんだと思うよ。
つまりバランスのとれることが大事。
新助は思い込みでバランスかいてしまったんだね。
熱烈に好きなら必ず相手に通じる...それ手前勝手で迷惑な思い込みです。