御祈祷を利かせるコツは何か?
もしそう聞かれたら手間や工夫をおしまないことだという。
真言を手で書く、真言を余計盛り込む。別に祈って置く。などなど。
こういうことが験のある祈祷につながる。
そういうところも密です。
見えないところで精進することが大事です。
本当は人型だって切るところからはじまる。
書くこと自体が御祈祷。私の師匠は書くだけで終わっていた。
それを壇上にもっていって祈るとかしないでも書くことが祈願だといっていた。
確かにそうです。私は書き九字、書き加持だ・これは・・と思っていました。
それだけで鮮やかな験が出る。
まあ、私は師と違い凡僧ですから書いてから拝んでもいますけど。
逆にどんどん手を抜く。これは験を失う。滅びる道。
同門で修行したある人はとってもきれい好き。だから何でも印刷で処理する。
この方は字もとても上手な人でしたよ。
お父上は名のある書家だったと聞きした。
でも筆で書くと全部が同じようでは無くばらばらだから奇麗じゃないといって人型まで印刷していた。書くのが御祈祷なのにこれじゃ意味ない。
一事が万事 わたしに言わせれば手抜きです。
楽をしてあぐらをかくことを本尊は許しません。そこから腐っていく。
報いを受ける。
それで結局お寺を去っていくことになった。
切る、折る、書く。
総てが呪術です。
その手間を省けば、料理屋が「本だし」をインスタントのダシに変えるようなもんです。
あれでも通用する。これでも通用する。
そういう料理屋はしまいに店をたたむ羽目になる。
行者も同じ。
そうやっているうちにどんどん手間を省く事ばかり考えて滅びの道を歩みだす。
むろんそんなことしてちゃ大きな人数を相手にできない。千人、万人は無理。
だからいうんです。
私みたいな行者稼業は老舗稼業。決して大店舗になっちゃだめだと。
一元はんはお断りくらいでええんだす。