かなり前、総代さんのお母上が病気で護摩祈祷したとき、壇上に大きな蛇が現れてのたくった幻影を見ました。
いやにアリアリとしていたので思い切ってその話をすると、実は納屋の藁をもやしたらそのなかに大きな青大将がいたそうです。
みつけた時にはもう焼けて死にかかっていた。
それで気の毒だがやむなく川にそのまま流したそうです。
古い家では家に住み着く蛇は主といいます。
家の守り神です。
それを殺してしまったわけです。
それで話し合ってその蛇を祀り納めるために良く神具店でおいている瀬戸物の白蛇さんを祀った。
それで不思議と病はだんだんと良くなっていきました。
そのうちしばらく年数がたってからのこと。
私が高野山の奥の院近くの仏具店で松に蛇が寄っている仏像を買ってきてあったので、そちらに入魂しなおすことにしました。
理由は瀬戸物ではいつか壊れてしまうかもしれない。そうしたらこれが何の由来の神様なのかが後の人にはわかるまい。
木なら瀬戸物よりもずっと丈夫で長持ちです。
そしてその折に寿恵廣弁才天(すえひろべんざいてん)という御名をつけ書きつけました。
それから10年以上たって最近のことです。
今度は大きな白蛇さんの彫刻で立派なものを入手したのでお御魂をそちらにいれてさらに祭り上げいたしましょう。日頃お世話になっていますからそれくらいさせて頂きますと申しました。
それで以前の蛇さんはどうするか?という話に
同じようなご神体が二つあっても混乱するので古いほうは奉納されるということになりました。
そうしたら数日後のこと、知り合いのお寺さんから興味深い話があった。
ご自分の元実家の敷地に大きな大きな黒松があったのだそうです。
いまはもう一族はいないのですが、それが邪魔だというので切ってから、後にそこに住む人は皆早死にしているという。
もう直には関係はないのだけど、それがどういうわけか気になるので祭り納めたいがどうすれば・・・というご質問。
そしてどうもその松に古い蛇さんがいたらしいという話もされました。
色々話をするうち、そうだ!こんなお像があるけど、それに祀って供養すればどうだろうかといきさつを話したところ、それなら是非引き受けたいとのお話。
さっそく寿恵廣さまは抜根して新しいお神体にお移しして、元のお像はお送りすることにしました。
こんな話をすると蛇と弁天様は違うだろうという人もいるでしょう。
もちろんそうですが、これは神道で死んだ方に彦とか姫とかつけて神様に追贈するのと同じようなこと。
彦や姫で神さんになったといってもそれはより大きな神の流れに入ったのと同じこと。
こうすることで蛇さんも弁才天という大きな集合無意識の中に溶け込んで仏道信仰の良き縁となります。
諸法皆是因縁生
そこにはどこまでが蛇でどこからが弁才天なのかなどという区別はない。
何でも縁として生かすのが大乗のやり方。