「ミッドナイトスワン」という映画を見ました。
性同一性障害の男性「なぎさ」は女装バーで働いている。
そこへ親戚からアルコール依存症の母を持つ少女が預けられてくる。
彼女「イチカ」は虐待を受けて自咬症もある。
「なぎさ」は不本意にあずかるのだが・・・いつしか彼女のなかに自分と同じ孤独を見出す。
やがてバレエに才能があると見いだされたイチカをなぎさは本気で応援しだす。
草彅剛さんの「なぎさ」がイチカを理解するにつれ本当の母親に見えてくる秀逸な演技。素晴らしい。
新人 服部樹咲の演技もすごくいい。もともとバレエ畠の人なんですね。
でもそんなやさき実家からアルコール依存から立ち直ったと母親が「イチカ」を迎えに来る。
「イチカ」が去ったあと「なぎさ」はある重大な決意をする。
この映画は単に性的マイノリティの人の苦悩を描いた映画には思えない。
それはあまりに浅薄な見方だ。
イチカも苦しんでいる。アルコール依存症のイチカの母も苦しんでいる。
なぎさの性同一性障害を医者で治る病気だと思っているなぎさの母和子も苦しんでいる。
生き甲斐のバレエが続けられなくなったイチカの友達リンも苦しんでいる。
なぎさの店の同僚で転落人生に堕ちたミズキも苦しんでいる。
皆が苦しんでいるがそれは突き詰めれば他人のせいではない。
自分の思いや在り方を扱いかねて苦しんでいるのだ。
仏教的に言えばカルマによって苦しむといいかたもいえよう。
ではカルマを脱すればいい?
カルマは基本的に脱することはできない。
そのカルマが作ったものこそが現在の自分なのだ。
全てのカルマを解脱したなどと言う新興宗教の教祖様もいるようだがそういう人は自分が何を言ってるかも全くわかっていないのだ。
魚は水を自由に泳ぎ、鳥は自自に空を飛ぶ。
だが魚は水のなかから出られず、飛ばない鳥は死するのみ。
だから魚は泳がねばならず、鳥は飛ばねばならない。
我々は皆カルマの内に生きている。
そう、生きるということは自己のカルマを生きる覚悟を言うのだと思う。
カルマを脱するとはカルマを生ききることに他ならないと私は思う。
自己の在り方を悩み考える人すべてに是非とも見て欲しい映画だ。