若いころ、中国旅行した時に韋駄天の仏像を買って帰ってきました。
良く彫れては勇ましくはあるが当時の中国らしく革命劇の英雄みたいな顔の韋駄天でした。
中国では護法韋駄と呼ばれてどういう訳か、三国志の関羽さんとともに観音様の脇侍になることも多い人気の護法神です。
京劇の白蛇伝では、白蛇精「白娘子」を退治するために法海和尚が法力をふるってこの韋駄天はじめ様々な護法神を呼びだします。しかし悉く、白蛇の魔力に負けて退散する情けない場面もありますが、これは妖怪の魔力を強調するものでしょう。
足が速いので有名ですがこれは舎利を盗んだ飛行夜叉を捕まえたという仏教神話から来ています。
スカンダと言って聖天尊の兄弟とされます。
当時、この金翅鳥院では東京から「大東流合気術」と言う武術の先生をお呼びして稽古をしていました。
私も武術は下手の横好きである。おまけに生来怠けものです。上手くなるわけない。(笑)
稽古も行った時だけ。
大東流の先生は物欲のない淡恬な先生でな部屋にものを置くのが大嫌いで机も電気の傘も取り払ってしまって畳もギシギシ鳴るような部屋に住んでいらっしゃいました。
和机も台を抜いて枠だけにしておられました。
台だけならまだしも、こんなものなのにするんだろう?と不思議だに思ったものです。
その六畳間くらいのとこで投げたり投げられたり、四人ほどでうかがって稽古した。
そのうちに、いっそうちに来てくださいという事で一時は外から人も来てほとんどの部屋で稽古していた時期もありました。私ももの好きです。
面白いことに蒼龍院の脇氏が来て体験稽古したがその時は技が全くかからなかった。
思うに彼は陳氏太極拳と言うのを修行していて独特の「纏糸勁」と言う身体技が身についていたので先生の逆技がきかないようでした。
いくつか試したが先生も「ほほう、いや、効かんねえ」と暢気に笑っていらした。
ま、そういうおおらかな先生でした。
実は先生のそういうとこもなかなか好きでした。
それで三年くらいやっているうち、その韋駄天像を差し上げました。
その先生はもともとは九州の禅僧だったのですね。
禅寺の食禄を守るの韋駄天様のお役目です。
それで食堂に祀る。
禅僧なら御縁もおありと思い差し上げた。
そうしたらなんと、ほどなく、結婚されて大きな道場までたという。
それで鎌倉道場もジ・エンドとなった。
岳父が建ててくださったようです。
「いやあ、御利益あったよ」と笑っておられた。
道場が建ってからはお会いしていないがまだお元気でいると思います。
私より5歳ほど上の方でした。