「先生のところで得度して修業したいんですが・・・動物が苦手で。」という電話
「動物の世話しないと密教修業はだめなのですか?」
例によってこういう質問をする人は名前も在所も言わない。女性だということくらいしかわかんない。
「うちはね。でもよそはそんなことしないでしょ。それはうちだけの特色ですからよそ行けばいいんじゃないですか。うちだって主に行者志向の人だけです。そういうのしてもらうのは。」
「じゃあ、何故そういうふうにしているんですか?」
「理由ですか?
時には行者は人の言わない心のうちまで感じ取る必要がある。
動物なんかは主に、「喉乾いた。おなか減った。」「体の具合がよくない。」「ここ居心地悪い」の三件ですから、そこも感じ取れないようではだめというのが私の考え。人間なんてもっと複雑だからね。
お弟子さんの洞察力を養うためにうちはそうしてるんです。」
「私、洞察力あるんでそこはしないでいいですか?」
「…私はあなた受け入れるなんて一言も言ってないよ。
自分で洞察力があるとか、こんな能力があるとか、はじめから決めてくるなら人の指導はいらないでしょう。」
「でも霊感あるので人の思ってることはわかるんです。だからそういう洞察力の指導はいらないのですけど、密教とかは伝授してもらわないといけないんでしょ。だから、そこを是非お願いしたいんです。」
なるほど、ずぶの素人がはじめからよその住職や客僧にするお客様対応をしろということですね。
「ああ、そういうことなんだ。…なるほどね。
でも、私はそんなあなたを弟子にはしないことくらい霊感でとうに見抜いておられるでしょ。さようなら。」