甲斐の武田信玄の軍師、山本勘助は戦における「星読み」上手であったそうです。
奇門遁甲などに近い術を心得ていていついつ行けば、自然の支持を得て勝ちやすいなどと言う心得があったといいます。
だが戦はときにより変化するもの。自らがその悪い方位や星をついて闘う羽目にもなりかねません。
そんな時においてどうするか?勘助はその著「大星伝」で「真の破軍星」と称して返し技を書き残している。
それは極めて密教的な方法です。
自らが諸星の総本地である虚空蔵菩薩になったと思えというのです。
つまり自分のいるところが宇宙の中心と考える。
東西南北いずれに行こうとも自分おいる場所が中心。
まあ、大宇宙に出れば方位や方角はないから理屈の上でもそうですが。
大星伝にはそれだけが記されている。やり方は書いていません。
でも当時のやり方と言えばそれもおおむね密教的でしょう。
そこでこれを実際にやってみましょう。
以下は密教的方法「道場観」の部分を簡略化したものです。
まず端座して自分は今、方位も空間もない世界にいると考える。
ここはぢ味です。しっかりそのようにイメージしてください。
その自分のなかに赫々と輝くタラークという金色の梵字が現れる。
梵字は周囲にまばゆい光を放っています。
これをしばらく思います。
口には虚空蔵菩薩の真言「ナモアキャシャ ゲルバヤ オンアリキャマリモリソワカ」と唱えつづける。
そうするとこの文字はだんだんと大きくなって宇宙大にまでなります。
宇宙に満ち満ちている梵字を感じます。
そうしたら次に少しずつ梵字が約まって元の大きさになる。
真言は心の中で唱え続けます。
次にタラークが虚空蔵菩薩になると感じます。密教ではここで三昧耶形というのが登場してもう一段あるのですが、今は省きます。理由は煩瑣であることと普通は密教の三昧耶は伝授されて初めて知るものだからです。
虚空蔵菩薩のお姿は宝剣と如意宝珠を持った美しい大菩薩の姿です。時に五智如来の宝冠という五智如来のお姿が浮かぶ壮麗な冠を冠ることもあります。
五智如来の冠を被るのは、この菩薩が実はすべての如来の知恵を具足した完成された知恵を持つ尊だという意味です。
外にも准胝仏母が冠っています。
虚空蔵菩薩は少し大きくなって自分と重なってもいいでしょう。
虚空蔵菩薩は星の総本地ですからいかなる星の虚空蔵菩薩の外にはないのです。
かくあれば星の障礙も方位の災いもない。
虚空蔵菩薩になりながら東西南北すべてを照らし祝福します。
この観法に常に親しめば星の影響を受けることは少なくなると思います。
「真の破軍星」とは「破軍星の大事」という技の返し技です。
「破軍星の大事」は敵を方位上の窮地、破軍星の方位に誘い込む戦法です。
でも、これを免れるという「真の破軍星」の原理は破軍星であろうが暗剣殺であろうが歳破だろうが同じことだと思います。
方位占術における星の考え方に二つあります。
ひとつはまだ科学で証明されてはいないが地磁気や電磁波のような物理的存在。
今ひとつは心の影です。「心外無別法」 仏教では後者と考えます。
そうでないなら祈りによって星の影響など防げるものではありません。
この観法は方位、星回りに留意する方は憶えておかれるといいと思います。
実際の災いを多分に軽減するでしょう。