だいぶ以前もう何十年も前だが、大学出てそのすぐあとくらい。母の代参で赤坂の豊川稲荷から出てくるところをなんかのキャッチ同じ年くらいの男性につかまった。
「お稲荷さん信仰してるんですか?」
「ええ、まあ」
「なんで信仰しているんですか?」
「なんで…なんでかな。好きだからかな。家でしてるしね。」
「お稲荷さんが好きなんですか。」
「そう」
「でもですねえ・・・お稲荷さんって本当の神様じゃないと思いますよ。」
「そう?」もうこのあたりからなんかの宗教だなと分かる。
「本当の神様は唯一の宇宙を作った方じゃないですか?」
「ふ~ン、宇宙は誰かが作ったと思う訳ですか?」
「だって作らなきゃあるわけないでしょ。あなたのきている服も持っているかばんも作ったからあるんじゃないですか?」
「そうは思わないね。じゃあ、化学繊維のもとである石油は人が作ったの。革鞄ならその革も人が作ったの?ただ加工しているだけじゃないの。」
「たしかにそうかもしれませんが、その大本を作ったのが本当の神様です。」
「じゃあ、その神様は誰がつくったのさ?」
「神さまは最初からいらっしゃるんです」
「なら宇宙も最初からあるのかもよ」
「いいえ宇宙はビッグバンが起きてできたのだからはじめはあるんです:」
「よく知っていますね。でもビッグバンはどこで起きたの?」
「それは宇宙より前の空間です。」
「じゃやはり最初からなにかがあるんでしょ。それがただ変化して行くだけかもよ。」
「本当の神様を信仰すればわかります」
「信仰しないからわからないというのですか?」
「そうです」
「じゃああなただってお稲荷さんを信仰したことなければいいも悪いもわからないでしょ。」
「お稲荷様なんて最高の神様ではないです。」
「最高の神さまって何です?」
「だから唯一の神様です」
「唯一だろうが八百万だろうが、私にはアンタの神様よりお稲荷さんが性に合っているんでね。私の思う最高ってそういうことでしかないんです。さようなら。」