こんな話を聞いたことがある。あるお寺にいわゆる「秘仏」があって何人も絶対に扉をあけてはダメという。
もしも開けたら目が見えなくなるという言い伝えさえあった。
ある乱暴な男が「そんなバカな迷信があってたまるか!」とわざと強引に開け放った。
「何ということだ‼」
うろたえ騒ぐ檀信徒の前で「どうだ。お前ら!目など見えなくならないだろうが!」と豪語した。
だが、やはり恐ろしいことにに、この男、三日ほどして俄かに目先がおぼつかなくなり、ついに全く見えなくなってしまったという。
寺ではますます大騒ぎ。
そんな中で日頃よく出入りしている掃除婦さんが寺にやってきてこの騒ぎも見て「皆さん。いったいどうなさいましたか?」と不思議そうに尋ねた。
それで、ことのしだいを話すと
彼女は「え、それってあの厨子ですか?」と指さして大いに驚いた。
「あれなら時々開けて拭き掃除してたんですけど・・・まずかったですかね。」
「‼」
辱めんとする心が光を奪った。
その後くだんの男の目がどうなったかは知らない。