金翅鳥院のブログ

天台寺門宗非法人の祈祷寺院です。

ミイさん供養

高校生のころ、昔、私が住んでいる近くに龍口寺があった。

日蓮上人が首を切られそうになって江の島から上がった光物のせいで命を長らえた霊跡である。

立派な五重塔はおそらく県下有数だろう。諸堂立ち並び、頂上には白亜のインド様式の巨大な仏舎利塔もある。

日蓮さんが処刑を待って入れられていたという土牢も残っている。

そもそもここは深澤の竜口明神という恐ろしい五頭龍王の社があって処刑場だった。

いわば当時の罪人の首切りは龍神へのいけにえである。(今は龍口明神社は西鎌倉へ引っ越している)

そういうところで日蓮宗大本山だ。

 

昔は10月のお会式などもかなり派手にされて万燈行列が繰り出して夜を彩り、大変にぎわった。

今の人はほとんど知らないだろうが「赤坂小梅」という当時の大物「芸者歌手」も来て小屋がかかったこともあった。山門近くにはうちわ太鼓を売る店などが出ていた。

 

その境内に七面大明神のお堂があったのである。

 

七面大明神というのは身延山の裏山である七面山の龍神であり、身延での日蓮の説法には貴い身分らしき美女となっていつも加わったという。

あれは誰だと皆がいぶかしく思うようになると日蓮の勧めではじめて本相の龍体を現したという。

三年ほどあとになってある日蓮宗の行者さんに「アンタの守護神は七面さん。七面大明神をよく拝みなさい、」と言われたこともあって私は七面さんにとても興味を持っていた時期もあった。

結局、日蓮宗は信仰しなかったので縁はなかったが。

 

その境内のひときわ高い奥の七面様の御堂にある尼僧さんがいらして、そこにいくと経木で作った船に卵やお菓子が載せて所狭しとたくさん並べてあった。

これはなんですか?というとミイさん供養だという。

人は大概は蛇を殺したりいじめたりしてその恨みを受けているから懺悔して供養するのだそうだ。

これでよくなる悩みも多いという。

なかなか神通に長けた尼さんだったらしいが、一種の霊能者であったのかもしれない。

 

今では私が住む里山あたりでも蛇はそんなに見ないようになった。

酸性雨でカエルが激減してそれを食べる青大将やヤマカガシなどの蛇も減っているそうだ。

だから蛇を殺すとかいじめるもないだろう。出会うことがないから。

そのころの私も蛇を見ることはきわめて少なかった。

 

かの尼僧さんのところに寄せられた数々の問題が本当に蛇の祟りかどうかは私は知らない。

そういうものを否定するわけではない。

だが、そういうものもあろうが・・・、そうでないものもあろうかと思う。

しかしながら、それらも含めてこうした供養でいろいろな不都合がよくなっていったことは想像に難くない。

 

なぜなら問題を解決する人には「懺悔」ということが必要だからだ。

懺悔なく他人や他者ばかりを責める問題解決の仕方は必ず禍根を残す。

 

そして、蛇でも、人でも。餓鬼でも何であれ、「私が悪かった。申し訳なかった。どうぞ許してください。」という懺悔の気持ちはすべてに波及して通じるからだ。

 

若欲懺悔者 端座視実相 衆罪如霜露 慧日能消除 懺悔六情根

  

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