「形見とて 何残すらむ 春は花 夏ほととぎす 秋はもみぢ葉」
質素な生活に徹せられた江戸時代の禅僧・良寛さんの御歌
たしかに雪は春になれば跡形もない。
春の花は夏には散って残らず、夏聞こえたホトトギスの声も秋にはない。
秋のもみじの美しさも厳冬来ればいずくにぞある。
人の一生もかくのごとくなれば何を残そう。
トラ死して皮を残し、人は死して名を残すというがそれが何になる。
汚名を残さねばそれでよいと思う。
何も残さなくてもよい。残して何になる。
人の心に残るというが、あなたを知る人もやがて死ぬ。
さすればなんにもないのだ。
誰も知らない存在になるのは極めて自然なことだ。
天地自然とともにある大変清々しい詩だ。
この心に少しでも近づきたいものだ。