愛染明王の念誦をしていたらひさしぶりに霊狐さんから声が。
「お前。愛染明王は弓矢を持っているだろう。あれが敬愛の表示ということになっているのは知っているな。
弓矢というものはな。
どんな立派な弓でも長さのあわぬ矢はつがえられぬ。
どんな立派な矢であれ、あわぬ弓からいることは叶わぬ。
時に人間の男は過ぎて言った女をあんな女はなどと悪しざまに言い
女は女で過去の男をあんなつまらぬ男などということがあるが。
つまらぬ男にはつまらぬ女
つまらぬ女にはつまらぬ男だ。
どちらも同じなのだ。
自分が過去に知った者を悪しざまに言うのはおのれを悪しざまに言うに同じ。
愚かなことだな。
良き弓になりてこそ良き矢はえられる。
良き矢になりてこそ良く弓にそうのだ。
弓でも矢でもまず己の良き弓か良き矢かををかえりみるべきだ。
そうでなければ同じ愚を繰り返すであろうぞ。」