金翅鳥院のブログ

天台寺門宗非法人の祈祷寺院です。

軍荼利明王


軍荼利明王様の小像が修復を終えて帰ってきました。小さな彩色像ですが彩色像にしては小さいのに細かくできていると思います。全部で10センチくらいのお像なんです。                                

イメージ 1

軍荼利明王は聖天信仰をしている方にはゆかり深い明王様です。
結界明王としては五大明王の随一といっていいでしょう。
ある仏教神話では軍荼利さんは歓喜天の女天と夫婦なのだとか。
男天はいわば間男という訳でそれで軍荼利を怖れるのだとか・・・。
この話は仏教神話にしてはちょっとくだらなすぎます。
軍荼利明王はもともと毘那耶伽をくだす力が強い。
チベットではビグナーンタカという。ビナヤカヤを下すものの意味。
この明王さんがいると聖天さんの眷属の横暴がないといいます。
たぶん、怖いんで慎むんでしょう。

真言方では聖天厨子の真裏にしばしば瓶を立てる。これが軍荼利の三昧耶形です。こうしておくと障礙を除いてくれるのだといわれます。
ヨーガでいうクンダリニーというエネルギー基盤の話が良くこの明王とのかかわりあいでいわれますが、少なくとも残念ながら日本密教にはそういう相伝はないのです。
伝統的ヨーガの行者でもある井口師の話では、よくいわれるようなクンダリニーは上昇するというイメージではなく眠っていた蛇がまっすぐに伸びるというイメージなのだそう。
軍荼利明王を拝むとクンダリニーが上昇しやすくなる?
いやあ、それは絶望的にないと思うなあ・・・。

もっともインドでは人格と高潔さとクンダリニー覚醒は必ずしも関係ないらしく、クンダリニーが覚醒したけど、人格が伴わない人間がいて問題だとか聞きました。
一生懸命に修行していながら、もともとはジェダイの騎士だったスターウォーズの「ダースベーダー」や快傑児雷也の同門で仇の「おろち丸」みたいのになっちゃう人がいるんだそうです。
悲しいね。
でもそれは密教でも同じことです。
発心のうちに名誉だの財だのというものへの強い執着、邪心、盗心あればそうなるね。いくら修業しても悪修行になる。
無論そういう存在に全く関心のない人というのは、私も含め少ないけど、そこが目的になっては駄目ですね。

軍荼利明王は金輪仏頂のパワーも跳ね返せるほど強力だとされているのですが守るべきは自分というより自分の「菩提心」や「善き心」でしょう。
毘那耶迦や天魔以上に自分の邪心から菩提心を守らないと転落しやすいのは誰でも一緒のことですね。