金翅鳥院のブログ

天台寺門宗非法人の祈祷寺院です。

ウスシマ明王

ウスシマ明王は烏枢瑟摩とも烏枢沙摩とも書きます。
ウッチュシマというのが梵名です。
不動明王や愛染明王と同じ明王ですが、昔は誰も知らなかったのに近頃ではトイレの守護神として「トイレの神様」の歌や御便所を掃除すると運がよくなるというとともに有名になりました。
この間荒物屋に行ったら金属製のコロコロしたマスコット的なお像も売っていました。此れトイレに置くのかしら?
私の所にも数体あるのですが小さいのが多い。
最も大きいのは長年「青面金剛」と思い込んでいたのでした。
どうもここ数年になって改めて観てこれはウスシマさんだと判った。
だから拝みなおさないといけないのでお像を飯縄山から移動してきたのです。
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                  拙寺のウスシマ様お優しいお顔です。


ウスシマ様は台湾や中国南部ではとても人気があります。
明王と云えばこの人という感じ。最近は不動明王も少し出てきたけど古いのはなくて例によって日本の仏像をもとに作ったヘンテコなものが主流。
酷いのはチベット仏らしく作ったのもある。
チベットの不動明王は右足を屈して左はのばし右傾の姿勢をしています。主に立ち姿で右手に刀を振り上げ、左手が羂索。金剛手菩薩と持ち物が変わる程度で日本のような感じと全然違います。
ウスシマさんはご利益満載なので中国人に人気があるのも当然。
子宝、財運、除病、仲直り、怨敵退散なんでもござれです。
トイレの神様としか思わないのは日本人だけです。
昔の密教の伝書にもやはりそういう御利益がたくさん書かれています。
江戸時代には「烏樞沙摩金剛修仙霊要録」なんて民間向けにおまじないの本まで出ました。結構濃い内容の本です。

ウスシマさんは特に鬼魔を除く本誓が優れているのでいわゆる霊感の強い人は信仰するといいかもしれない。
もともとトイレに祭られるようになったのは昔釈迦が亡くなったとき、大自在天は傲慢にして諸天が参集してもいかなかった。
そこで不動明王が連れに来ると大自在天は汚物を空中にうずたかくして
バリヤーにしてしまった。
仏は不浄が嫌いだからということでしょうね。仏じゃなくても嫌だと思うけど。
そうすると不動明王はウスシマ明王に変じて不浄をみな食い尽くしてしまったという。それでもって大自在天は首根っこを押さえられた。
でもどうしてもいうことを聞かないので大自在天もその后も踏み殺しましたというのが降三世明王のお話。だから降三世は大自在天と烏摩后を踏んでいます。こちらはかなり乱暴です。
でも、お不動さんもウスシマになったり降三世になったり忙しい。
この時、大自在天は不動明王に「お前はただの夜叉だろう。私に命令するとは笑止千万」と云ったそうで、このあたりから見ても明王というのはやはり夜叉出身なのだと思う。考えてみれば大元帥明王や青面金剛も夜叉出身です。
金剛夜叉に至っては名前から見たってモロ夜叉ということですね。
樹木の精を除くなんていう珍しい御利益もある。
私は亡き師匠から枝の垂れさがった樹は拝んでから切れといわれました。
なんか住んでいるんです。そういう木は。
日本では鬼だけどインドでは夜叉は樹木の精霊というそうです。樹木とは別ですが夜叉はそこに住んでいるという。
もともと明王は夜叉だから夜叉に強いのは当然かもしれません。
だからインドではある種の樹木には母親は子供を近づけないそうです。
日本の四国では夜叉はともかくタヌキが住んでいる大木というのは多い。
勿論、タヌキと云ってもイヌ科のタヌキという哺乳類じゃなく、それに仮託されてそう呼ばれている精霊です。
凄いのは切ろうとすると事故続出!
穴守神社の大鳥居撤去でそういうことがあったのは有名ですけど恰好やるもんだね。狸も。
結果的にそれで道の方が迂回している。
こういうのもウスシマさんで御祈祷すればいいのかもしれないけど、タヌキにだって居住権はあるだろうからあまり大きな声で言うのはやめておきましょう。