金翅鳥院のブログ

天台寺門宗非法人の祈祷寺院です。

深沙大将和讃

深沙大将和讃 珍しいので紹介します。


帰命頂礼深沙王 毘沙門天の化身にて 七千夜叉を率いつつ

仏法擁護したまえり 衆生済度のその為に うちには慈悲を含みつつ

外には夜叉の相をなし 魔軍悪鬼を降伏す 昔玄奘三蔵

流沙を渉り雪山の 険路をこえて中天の 一切経を将来す

その三蔵を助けんと 常随給仕せられたる 豊満童子は大王の

化身とこそは知られ かかる大悲の尊なれば 真の心に供養せば

現世は福徳円満し 寿命長遠智慧愛敬 殊には凶方殺侵の

障りを祓い鎮めてぞ 未来は浄土の蓮台に 必ず引摂したまわん

善男善女もろともに 不思議の神力仰ぐべし 皆人信心発起して

この大将に帰依すべし

オン アフルアフル サラサラ ソワカ 

これにて深沙大将の大方のことは判りますね。

諸天尊は古来、悟りに導く利益はないと言われますが、毘沙門天弁才天そして、この深沙大将は別格と云われています。
その他、石山の淳佑阿闍梨が幼少の頃病弱だったのでこの尊を深く信仰した話などがあり、除病延命や仏法護持の利益があります。
また、陰陽道の冥界の神泰山府君とも同一視されています。
閻魔天もそうですが冥界の神様だから寿命が伸ばせるのかも知れません。
本地は十一面観音と云われ、この観音と同じく現世に十種勝利、命終に四種果報が得られるといいます。
この神の数少ない霊場である東京調布の深大寺の縁起では、その開山となった満功上人の父母がこの神の霊験により悲恋をくつがえし結婚できたといいます。それゆえ、深大寺の深沙堂の参拝者には良縁の御利益があるのだとも考えられています。
和讃では方位除けの効果が歌われていますが、私は故野澤密厳猊下から深沙大将は鬼門除けの神とも聞いておりました。
玄奘三蔵に従ったこの神は西遊記の流沙河に住んでいた沙悟浄のモデルとなっていますが、長い道中、三蔵を護ったことからこうした旅行を護る転じて方位の災いを除くという御利益が言われているのかもしれません。
ちなみに沙悟浄は日本の西遊記では「河童」の沙悟浄ですが、原本では河童ではありません。
河童は日本独自の妖怪です。九州の河童の大将ネネコは中国から渡来したといいますがこれも日本の伝説で中国では河童という言葉はないのです。
近いところでは河伯という水の神がいます。但し、西遊記の記述では沙悟浄は「竈君」のようで真っ黒な姿として表現されています。
竈君は竈の神ですが、黒は水を代表する五行の色ですからそこから来ているのかもしれません。
ただし、供養法では真っ赤な色に観想し、「般若十六善神曼荼羅」にもそのように描かれています。