どんなにみっともなくみじめで最低でも生きていたいと思うのが人間だ。
実に浅ましいが、この思い、青葉被告だけではないだろう。
ここに生き物としての人間の赤裸々な本心がある。
大方はそうだ。
いざと死ぬか生きるかとなれば私も同じだろう。何も変わらぬ。
私は青葉被告の命を助けたいとは露ほども思わない。
だが本人のこの浅ましい気持ちはわからなくはない。そういうものだ。
生死の前にはもう善悪是非などもう頭のどこにもないのだろう。
生きていたい!それだけ多くの大事な命を彼は無惨に焼き殺して奪ったのだ。
だが今はその思いは彼の脳裏にはないだろう。ただ生きたいのみの一点だ。
それが人間の中における動物の部分だ。誰にもある。
これを想えばどれほどの罪もなき身で軽々に自殺などしてはなるまい。
死んではいけない!
罵られ、嘲られたとて何ほどのことやある。
泥水をすすり、敵には食らいついてでも生きるのだ!
死を想えば何でもなかろう。笑える日も生きていればこそだ。