金翅鳥院のブログ

天台寺門宗非法人の祈祷寺院です。

魔法使いは魔法使い

密教って身に付けたらすごいんでしょ?いろんな術が仕えていいなあ・・・なんていう人がいます。
でもって自分も得度して密教行者になりたいという人もいます。
そういうこと言うと大体世間では笑います。
でも阿闍梨の癖に密教の御祈祷なんてきくわけないなんて方もいますから、そういう人に比べればずっとマシだと思うのです。
そこには確実に信仰がありますからね。
信仰の無い宗教家なんてダメになったヌカミソよりもどうしょうもないですから。

実は私はそういう人を笑う資格がありません。
若いうち自分でもそんな風に思ってあこがれていた時期があります。
実際に儀軌には色々な面白そうな秘法が説いてあります。
でも密教を学び、確かに色々な法を使えるようになってもそれはあくまでそれはその人が行者であるかぎりの話なのです。
密教の行者はいってみれば丁度おとぎ話の魔法使いのようなもの。
魔法使いは色々な魔法が使えるけど王様でも大臣閣下でも女王陛下でもないですよね。
良くも悪くもあくまで魔法使いは魔法使いです。
世俗とはちょっと離れていて、森なんかでフクロウや黒猫と暮らしています。
家族も余りいる感じは無くて孤独な感じですね。
マアそういうもんです。
だから魔法使いはいくら魔法がつかえても大金持ちにもならないし、王様にもならない、大臣にもならない。モテモテなヒーローでもない。
魔法使いでいながら王様や大臣になろうとすると必ず失敗します。
白雪姫の悪い御后はそういうタイプの魔法使いだったから滅んでしまった。
お金持ちを目指しても失敗します。
魔法使いは魔法を人に提供する存在です。
それに徹して、そういうなにか余計なものになろうとしないのが本来の魔法使いなのです。
密教行者は魔法使いじゃないけどそこは同じ構造のように思います。
だから密教行者になったって、どんな秘法を修法しても大金持ちにもならないよ。
権力者にもならない。ましてやモテモテなんかになりませんよと申し上げるのです。
もしそうなったというのならそれはもともとその人の持っている運勢と思います。
「因縁」の問題です。密教行者になったからじゃないと思う。

昔のことだけど、どうも結婚に縁がない。それは因縁が悪いからだと云うことで、それを克服するために得度したという女性がいました。そのようにあるエライ御坊様から勧められたとのことです。でもうまくいかない。
要するに結婚したいので彼女は尼さんになったわけですね。
でも、これってありでしょうか?尼さんて結婚したい人がなるものなの?
世俗の願望を求めてお坊さんになるなんていうお話はなんかが違っていませんか。
聖天供なんかも、自分でできたら「なんでもかんでも全てが思いのままになるのだ!知っている人がうらやましい~ッ。」と思っている在家の人が時々います。
多分、まじめに修行すれば天尊の目から見てその行者に本当に必要なことは叶うでしょう。
でもね。何でも思うがままということにはまずならないと思いますよ。