聖天様はよく「大自在天観世音・感応道交難思議」と言って女天は観世音、男天は大自在天といいますが、この自在天は大自在天ではく、歓喜自在天です。
難爾計自湿縛羅天といいます。
ナンディケーシヴァラ。訳せば歓喜自在天です。
昔の仏教者の多くは自在天と言えば大自在天つまりシヴァと他化自在天くらいしかしらない。大自在天はいわば大黒様です。
シヴァの化身が大黒天ですから。
もっとも日本ではクベーラと混同して入ってきたので、本来的な大黒天は憤怒裸形で三面六臂出髪の毛を逆立てる摩訶伽羅天と言われているもののほかない。
いわゆる世の中で言う大黒さまとは違います。
大国様の大国主命と習合して全く日本的な御姿になってしまいました。
大自在天は密教で十二天のうちに伊舎那天ともいう。この伊舎那というのはイーシャナと言ってこれまた本来は自在という意味しかない。
だから本当は何自在天かわからないけど十二天は皆、インドの代表的天部だからおそらくシヴァということでしょう。
一方の他化自在天はいわゆる第六天魔王です。
佛教の魔王は下のような、皆さんが思うであろう角や翼の生えた牙をむく恐ろしいデーモン的な姿じゃない。
美しい王様のような優美な御姿で弓矢を持つハンサムガイです。
映画のヤクザやマフィアでも大物はたいていクールです。
欲界の第六番目の天界に住む。仏教では魔王がいるのは地獄じゃないのです。
最高の天界に住んでいる。
つまり欲界は欲望のある我々の世界でその最も頂上に魔王が住んでいるんです。
その上は梵天の住む色界でものは存在するが欲によらない世界です。
梵天様は一種の覚者で、バラモン教の悟りの象徴・お釈迦様の大先輩です。
だからお釈迦様が仏教の悟りを得られてこれを説くのは難しいからやめとこうかと言ったら、それじゃダメだよ。あんた説きなさいと勧めた神様。これは「梵天勧請」という有名なエピソードです。
面白いね。私たちの世界の頂点に君臨してるのは魔王なんですね。
でも、わかるような気がする。
密教の理趣経をはじめとするお経は他化自在天の魔王宮で説かれたんです。
密教は欲を否定しない教えですから、魔王さえも教化するには密教しかない。
聖天様は魔王だというのはここから来た誤解だと思う。
まあ、でも聖天様も9800の鬼王、シヴァの軍団の大将軍ですから魔王に負けずに怖いといえば怖いのですが・・・