金翅鳥院のブログ

天台寺門宗非法人の祈祷寺院です。

レプリカにエレベーターはいけないのか

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「新たな天守閣にエレベーターを設置することは難しいのでしょうか? 建築の歴史が専門で、自身も討論会に参加した麓 和善氏は、設置できない理由についてこう話します。 麓 和善氏: 木造天守にエレベーターを設置しないと早々に決めた理由ですが、それはエレベーターというのは揺れてはいけない構造になっている。それに対して、木造の天守というのは、いくら巨大であっても地震で揺れることを前提として設計が行われるんですね。構造の異なる木造の天守にエレベーターを設置することはできなかったんです。」

 

 

新しく建設するの歴史復元構造物にエレベーターはどうなのかという論争。

構造上揺れるので無理ならもう議論の余地はない。

 

だが、可能ならつけるつけないの是非自体は名古屋市のお考えは知りませんが、目的は何かによって違ってくるべき問題でしょう。

 

たとえば神社仏閣のような宗教的な建造物の場合、神聖性の意味から登れない建物はある。

五重塔などは単なる見晴らしの良い高殿ではなく仏舎利奉安の仏殿である。宗教的目的か、あるいは保全のための修築以外で登る必要がない。

つまり登りたいという要求は却下できる。

しかもそれ自体は宗教団体の持ち物であるから譬え歴史的な建築で公共から補助を受けていてもそこは譲る必要はない。補助の目的は市民サービスでなく歴史的保存だからだ。

 

では名古屋城を作る目的は何か?

そこが明確ならこの問題も明確になる。

若し名古屋城が現存する文化財のような歴史的建造物なら、私はエレベーターをつくることでその一部が損壊する(当然そうならないわけがない)ならそれは断固やめるべきだと思う。

それ以前に言うまでもなく文化財ならそれは国が許さない。

 

しかしこれはそうではない。いかにほんものそっくりに作ろうとも、それはもう名古屋城ではなく実際はレプリカである。

 

市がわざわざ歴史的な建物のレプリカを作ることの目的は市民一般にそれを見て学んでもらうということにあろう。

 

だとすれば公共性が担保されねばならない。

そうではないというなら名古屋城を市が作る意味はない。

 

たとえば豊臣家一族の財団のようなものがあったとして、そこが土地を買って太閤殿下を忍んで建てるならそこはどうでもいい話だ。エレベーターなどつけようがつけまいが自由だろう。非公開でもいい。まんいち公開する日が特別にあって、階段しかないので障害のある人がそこに登れなくてもそれは仕方ないことだろうと思う。

 

以上の観点からいって構造の安全性から無理ならともかく私は新築のレプリカにもったいぶって、歴史的な構造が失われるなどと称してエレベーターをつけない理由自体はないと思う。