上座部仏教では生存欲自体が輪廻の原因であるから極力これを少なくし、ニルヴァーナという「炎を吹き消す」状態を理想とした。
言うなれば安きことなき三界に輪廻しない完全な死といってもいいだろう。
だが釈尊自身のお言葉を借りれば「良く整えられた己」こそが寄る辺だ。欲望を根絶せよとは言っていない。それゆえバラモン教に広く行われていた苦行を否定された。
苦行は一種の生存欲との戦いと克服だ。究極は死との戦いと言えよう。
大乗は逆に生々流転しながら貪瞋痴に支配されずに「よく整えられた己」を生きる道だ。
しかもともに生きる道だ。
三界を旅するもそのような人は悲しみや憂苦に沈んでしまうことはない。