子供時代は藤沢市辻堂の熊野森というところで育った。
祖母の話では昔は権現山というところがあったそうでおそらく熊野権現が祀られていたのだと思う。
そこの松の木に巨大な蛇の抜け殻があった話を何度もきかされた。
まあ巨大と言ってもニシキヘビのような大蛇ではなく、たぶん大きなアオダイショウの抜け殻なのだろう。
クマも出そうにない街中で何で熊野森という地名なのだろうと疑問に思っていた。
そういう意味では熊野様のおひざ元で育った。
長じて大学生になって得度した。
当時はまだ少しは変な霊感のようなものがあった。
それが熊野本宮に行ったらふっと消えた。
今考えると霊感というより霊障の様なものだ。
それを話すと「消えて良かった、修行の邪魔だ」と師匠から笑って言われた。
熊野は三か所とも好きだ。
特に那智は大好きだ。
熊野は神界と人界の交流の地だ。
神の世界の者や生き物が地上に降りて来て混ざっている。
ああいうところはほかに知らないな。
この世とあの世がまじりあうというと恐山だが、あそこはとても霊界が近い場所だ。
だが熊野は霊界じゃなく、地上の神界。そんな感じを受ける。
私は神道集「熊野権現」にいう天竺の王が我が国に飛来したとか、蜘蛛に助けられたとか、12匹のトラに育てられたとか。金の車に乗って日本各地に剣を投げてまわったというようなパラノイアのような話が大好きだ。
おそらく私の頭脳構造に近いのだと思う。
「神道集」という映画を作ったらシュールできっと面白い。