金翅鳥院のブログ

天台寺門宗非法人の祈祷寺院です。

初午に思う

もうじき早いもので初午ですね。初午はお稲荷様のお祭りです。普通は二月の最初の午の日が初午です。初午なのになぜ1月でなく2月なのかは不思議に思う人もあるでしょう。
稲荷様の総本山ともいうべき伏見の稲荷山に降臨した日が2月11日の午の日だと言います。
もっとも旧暦の二月は今の三月あたりなので三月にやる地方も多いようです。私のところは因みに今年は三月朔日です。午の日じゃないけどお参りしやすい日曜日にしています。
それじゃ初午じゃないのではと言えばそうですが実は当院の場合はお稲荷様とは言ってもお祀りするのは「荼吉尼天」と云う仏教の神様です。荼吉尼天様とお稲荷様は狐つながりで明治以前は一緒と見なされてきました。
日本のお稲荷さんは食物の神様ですがこの荼吉尼天と云うのはインドの狐の精だと言われてきました。お姿は狐に乗った美女ですが本人も狐の精です。
もうだいぶ昔ですがある方が相談に来て「何か御利益のある神仏はどこかにないか?」と聞くのでまじめにお稲荷さんの信仰を勧めたら「私にキツネを拝めというのですか!狐なんて動物じゃないですか。」とムッとした人もいましたが、別に動物の狐を拝めというのじゃないのに本人はお稲荷さんより偉いつもりなのでしょうか。
「どうしてお稲荷さんが狐なんでしょうか」と逆に聞いたら「だって・・お社に狐が置いてありますから・・・」と云う答え。「お稲荷さんはウカノミタマノミコトというれっきとした神様ですよ。元はと云うと伊勢神宮の外宮の御祭神でもあります。狐はお使いでお社の脇に入るでしょう。」というと今度は「教養のある人間はお稲荷さんなんて・・。」と云う始末。
まあ、よその霊場に来て「どこかに良い神様はないか」を聞きにくるくらいだからよほど教養がある方なのでしょう。
私自身も大学時代によその宗教を信仰している方から「教養のある人が稲荷信仰なんておかしいよ。」と云われたことがあります。議論しても始まらないのでので「私は教養が低いので大丈夫です。」と云っておきました。
しかし今考えるとそれではお稲荷様に失礼ですね。
そこでお話ししたいのが天台教学で「十界互具」というものです。畜類は一応は人間より下の境涯ですが全てがおしなべて低いとは言えません。その中でもまた地獄から仏までの境涯があります。つまりすべての世界にまたその10の世界が包摂されているのです。だから鬼類や魔類から仏の境涯に上がった鬼子母神歓喜天などもいます。畜類の中に鬼のなかにも仏や菩薩もいれば、人中に鬼や畜類もいます。
神道のお稲荷さんは仏教的には天部でしょう。荼吉尼天も狐の精ですが勿論我々よりずっと高いところにいます。
「天台学概論」を書かれた福田老師は天台の大学者ですがこの理から蛇だろう狐だろうが仏性を拝めばそれなりの仏の働きがあると云う意味のことを書かれています。

それとこれは荼吉尼天信仰をしている人によくあることですが稀に朝起きたら背中に動物の引っ掻いた跡があるのだそうです。眷属さんがするのでしょうが、ただの悪戯ではありません。何か心得違いが有ったりするとすばやく察知して警告してくるのです。そういう人は逆にしっかり守られています。
わたしにはこうした経験がありませんが、最近ある大寺院にお稲荷さんがあってそこの搭中に移動した御坊さんにやはりよくそういうことがあると聞きました。活きの良い眷族さんがいるのですね。
そうしたのお稲荷さんは霊験もまた鋭いものです。