日本仏教の間でネズミは意外にもなかなか評判がいい動物だ。
三井寺の頼豪阿闍梨も大ネズミになって意地悪な比叡山に復讐した伝説がある。
江戸時代の滝尾霊託記にも天台宗の願海阿闍梨さんはネズミに関しては大黒様の眷属で…うんぬんと好意的にあるが猫は妖獣で忌むべきものとしている。
最期まで猫は良くないから飼うなかれと書いてある。
真言の高僧として名高い浄厳さんも猫は嫌いだったらしい。
どうやら高僧は猫はお嫌いのようだ。
殺生する様を見るからでしょうね。
まあ、私は鯱立ちしても高僧なんかじゃないから猫は大好きでいいと思っていますが・・別にネズミ類も嫌いと言うわけではない。
家を荒らすドブネズミ以外はね。
とはいえ、ネコは仏教のお経や典籍とをネズミの害から守った長い長い功労者だという。(最近の研究で2100年昔の遺跡から飼い猫の骨が出てきて弥生時代から猫は人間と一緒にいたことが判ったようです。)
だから大きな寺には古来ネコがいたという。
一方ネズミは経典を食い破ったりした困った存在で、それを退治するのが猫の役割だったわけだ。
嫌うのはお門違いだろうに・・・。
しかし、古来、猫はお釈迦様の死にもかけつけない不義の生き物で涅槃図にはネコが描かれなかった。
恐ろしい獅子や虎、オオカミ、蛇や百足まで書かれているが猫はいない。
こんな話がある。
その昔、禅宗の画僧として名高い兆殿子が希少な赤い絵の具を切らしてしまった時、どこからともなく猫が一匹現れた。
猫は自分いついて来いという仕草をする。
猫は殿子を顔料の土のとれるところに案内してくれたそうだ。
たいそう喜んだ兆殿子はお礼に何が欲しいか?と尋ねると猫は
「むかしから猫だけが涅槃図に描かれず、不義な生き物のように思われるのは猫一族の不本意である。お礼と言うなら猫も涅槃図に描き加えてもらいたい。」
と言いのこして去ったという。
爾来、兆殿子の涅槃図にはネコが描かれているという。