異界の存在として呪術者は女装することはよく知られている。
ツングースの呪術者もそうだし、日本にも中世には「地者」といわれる女装の巫女はあった。世界各地に類例はあるという。
キリスト教はそうした異界性を否定して神の前には皆同じ在り方を説いた宗教だから呪術者は存在しない。
呪術を行うものは神に逆らう者。悪魔の仲間だ。
だから西洋で魔女や魔法使いは悪魔と大して変わらない扱いである。
強いて言えば女装はしないものの、ヨルダン川の川邉に住むバプテスマのヨハネなどはイナゴと石蜜( 岩の割れ目に営巣した蜂の蜜 )などで糊口をしのぐ異界の人だった。
逆に女性の男装もある。
仲哀天皇の皇后であった神功皇后は三韓国征伐において「みずら」に髪を結んだという。
元来「みずら」は男性が戦いにおいてする髪型だった。
これも荒々しい男性性をわが身に宿すための呪術的な装いと言えよう。