金翅鳥院のブログ

天台寺門宗非法人の祈祷寺院です。

龍を喜ばせる

拙寺では五月に八大竜王様のお祭りですが、世の中には竜神信仰の方は多いですね。
この間、名古屋の猫ちゃんのブリーダーさん宅に伺ったらなんと弘法大師様の教会なんです。
高野山大師教会というのでしょうね。お母様がそこの教師であったそうです。今もブリーダーさんの姉上が来てお守りされています。
中央はお大師様、他にも厨子があり、なんとなくお不動さんに竜神さん・・・かなと思ったらやはりそうでした。
龍神さんはお名前は聞きませんでしたが岐阜だか、滋賀だかのお寺からいらしたそうです。
色々な龍神さんがいます。○○龍神という仏典にもいない感得像も沢山ありますね。
伏見の御山なんて行くとそういう御塚が山ほどある。稲荷と龍神は相性がいいんですね。

そんなことで今日は龍神さまの喜ぶ陀羅尼を御紹介します。
「大雲輪殿竜王安楽経」本来、祈雨の時、式衆がよむものです。
経典全部は無理ですが陀羅尼だけ。施一切楽陀羅尼と云います。
「トジト ダラニ ダラニ ウタラニ サンハラチシリ ビジャヤバランナ サテイヤ ハラテイジニャ サラカニャバテイ ウダバダニ ビナシャニ アビレイシャニ アドビヤカラ シュバテイ アジマタイ キクバラ ビキバギャ モラキリシャ バシッダヤマリ ギャニリ ギャキャ ダルマタ シッダロキャ ビテイニラ アランジャ バドギャシャマナ サルバボダバロカナ チシチテイ ハラジャニャ ジャニャナ ビキソワカ」
あまり読みやすい陀羅尼とは思いませんが切目は適当に入れてみました。正しくはどう切るのかわかりませんけど。
韻文的にこうすると読みやすい。
「トジト」は言わゆる「タニヤタ」(即ち)と同じですね。
本来雨乞いの御経ですからうまく感応したら雨降るかも。
その際は私、責任とれませんのでご勘弁ください。
楽陀羅尼というのは龍が宿命的に持つ三災を除くというのでこの名がある。
先ず金翅鳥に喰われる。次に熱砂で身を焼く。悪風に吹かれる。
多分これは自然界で蛇が猛禽に襲われたり、熱い砂漠の砂上を身をよじるように進んだり、大風にさらされて吹き飛んだりしているのを見てそう思ったのでしょうね。
でも八大竜王などの善龍はその禍が無いということになっています。
この御経には「輪蓋竜王」というのが出てきます。
これは密教ではヴァルナ天つまり水天ということになっていますが、別してバルナ竜王の名があるので違うようにも見えます。
輪蓋とはコブラが胸を広げてそれが傘のように見えるからでしょうが、インドの竜つまりナーガ神は多頭で表現されることも多い。
頭がひとつのナーガはむしろ稀のようです。
多頭の表現は胸を広げて威嚇するコブラがゆらゆら左右に揺れている臨戦態勢の姿を表現したものかもしれません。それで多頭に見える?
世の中に生き物として双頭の蛇というのもいますが、そういう種類ではなくこれは突然変異ですからあまり長生きしないことが多い。
多分これはビシュヌ神がベッド代わりに寝ている偉大なる「千頭龍王」シェーシャナーガのことでしょう。原初の蛇、仏典でもアナンタ(永遠の 終わることのない )龍王とも言いますが八大竜王の難陀(歓喜)竜王ではありません。八大竜王は有名ですがインド神話の歴史上からはシェーシャナーガこそは最も格が高い竜王のなかの龍王です。
一説にアナンタは九頭竜である和修吉 ヴァースキと同一視されることもあるようですがイメージとしてはだいぶ違う。もっと格上です。
唐招提寺には輪蓋竜王社があるそうです。
以前お参りしたけど気が付かなかった。
奈良近郊には善女竜王の住む室生の龍窟あり、洞川の龍泉寺、大峰本宮天川弁財天、三輪山玄賓庵の八大竜王、同じく八大竜王の額田の天龍院、生駒山系の八大竜王として知られる竜光院( 他にも生駒は八大さんの寺社がとても多いです。)や信貴山の空鉢護法などまったく日本一の龍神信仰の聖地ですね.龍神の里です。さらに言うなら和歌山の熊野那智社(飛龍大権現)から蛇行してこのラインは紀伊半島を北上し、大阪の生駒山上の八大竜王で一応終わる形です。
龍神様信仰の方はこの御真言よんで龍を是非喜ばせてあげてください。

イメージ 1

出だしから沢山の竜王のお名前が並ぶ「大雲輪殿竜王安楽経」