金翅鳥院のブログ

天台寺門宗非法人の祈祷寺院です。

修行と腎精  松江堂薬局のブログ

 

中医学の土台になる哲学思想に精気学説があります。

森羅万象、みな精により形成されているという思想です。

精は肉眼では見られない物質ですので「無」です。これが凝縮すると「形」になります。

そして「形」はやがて「無」に帰ります。例えば種は土の中で成長して芽がでて葉が出て、やがて枯れて無に戻ります。

人間もはじめは無ですが、母親の胎内にやどり形になり成長して人になりさらに成長し、やがて死に無に戻ります。

生命体では母親の胎内で精が凝縮し始めて妊娠となり、胎児は育ちはじめます。

故に精は成長、生殖の原動力であり腎臓に蓄えられるので腎精と呼ばれます。生命の根本なのですね。

精により人間の五臓六腑は活動するのですが、脳もそうです。若いうちは腎精は旺盛なので頭脳はよく働きますが老化により減ると脳も能力が低下して記憶力、視力、聴力などが落ちていきます。

「精根尽き果てた」というのは「物事を成し遂げる精力と根気がなくなる、気力も体力もなくなる」という意味ですが、一生懸命集中してなにかに打ち込んでいると精は消耗していってしまいます。

山伏の修行で唾液を飲み込んで精を補うというがあると羽田阿闍梨に伺ったことがありますが、唾液は腎の液。腎の精を補います。

修行ではやはり精が減るのでしょう。修行とはまさに腎精(人生)をすり減らしていく活動であると思います。

精は成長、生殖の働きの他に「気」に転化して防御作用として働きます。志村けん氏は病後で精が不足していました。石田純一は精が豊富でした。(よく子供を産ませました)この精の状態が生死を分けたのだと思います。

腎精を保つには規則正しい生活、早寝早起き、そして飲食です。腎は五行では水に属し色は黒です。黒色の食べ物、黒豆、黒ごまなど。またナッツは形が腎臓に似ているので木の実。クルミは形が前立腺に似ています。

ネバネバする山芋、オクラも腎臓によいです。

唐代の道宣律師は厳しい行のため体調を壊しますがそのとき夢に毘沙門天が現れ教えたのが「天王補心丹」です。これは心腎不交証で使います。心火が燃えさかり腎水が減少した状態です。

体はほてり、頭は思考が低下し、眠りが浅く、寝汗が止まりません。また足腰に力が入らないようになります。

修行をされる場合には精が減らないようにしたほうがいいですね。