私が二十代のころある尼僧さんが話してくれたお話。
あるお坊さんの高名を聞いてを在家の修行者さんが極寒の中、雪深い山寺に面会を求めて訊ねてきたそうです。
自己紹介を終えて開口一番
「いやあ。和尚様 お寒いですねえ!」
「・・・」
「イヤイヤこれは失礼しました。和尚様ほど修行され悟った方はこれくらい寒くもなんとも感じないでしょうねえ。私どもとは違うもの。」
すると和尚が笑って火鉢に炭を足し「アンタなあ、寒いときは寒いんや。当たり前やないか。暑いとか、寒いとか。そんな当たり前のこともわからん人間がなにがわかるんや。そんなんやったら悟りなんぞほど遠いわ。」