月の神様の使いと言えば中国でも日本でも兎。
中国には古くから兎の神様 「兎児爺」が信仰されている。
中秋の名月のころになると月を祀る。これは日本と同じ感覚。
「月餅」も本来は月にお供えするのでそういう。
だから餡の中に月をあらわす卵が入っているのが「本物」だという。
中秋節になると迷信打破の中国大陸でも露店などで盛んにかわいらしい兎神の土人形が売られて人気を呼ぶという。
その一方では台湾では月の神様の別な一面が復活している。
「兎児神」も「兎児爺」に極めて近いか同一の神格と思うが昔から同性愛の神様だったという。
18世紀の中国で同性愛が忌まわしいものとされてから一時衰退したそうだが、今の台湾は同性婚が公認されているので道教のお寺には兎児神様が祀られ、同性婚の儀式があるらしい。
本々、中国では月は太陰で女性の拝むもの。竈神は逆に男性がお祀りするものと言われていた。
したがってそこを言えば兎神を男が祀るのは陰陽逆転となるのだろう。
日本でも古い時代は竈の神は女性を忌むという。
台所は女性の取り仕切る場所だったのに意外だが、竈の切り火をするなど火そのものは陽であり男の扱うものとされてきた。
この考えは男性を陽、女性を陰とする陰陽思想から出たものであることは明白だ。
( ただし本当を言えば相手の性別がどうであれ相対的なあらゆる関係に陰陽は生じる。それは実に磁石の陰陽に全く同じく自然発生的に存在するのである。しかもその立場も固定的ですらない。)
今でも荒神様は女性の生理の間はお参りは禁止という信仰を残す地方もある。
まさに月のものは月の神に通じるのだろう。
聖天様も月のものの間はお参りしないというのも荒神聖天同体信仰から来たものだろう。
私が修行した寺で昔は女性は内陣に入れなかったと聞いた。
それもこれも別に女性蔑視とかでは無く荒神の性格を聖天様が帯びていると考えられたからだと思う。
荒神のお使いをニワトリとするのも月のお使いである兎と真逆に位置する干支だからだろう。鳥は太陽に住む金烏にも通じる。
江戸時代以前には月の女神である赫夜姫伝説を残す富士山も月信仰の山であり本来極めて女性的なエネルギーの霊山と言えよう。