[10月6日午後8時頃、富山県黒部市宇奈月町の保育士、松木あすかさん(22)は、買い物帰りに同市荻生の県道を車で走行していた。
その頃、黒部署では約半数の署員が市内に散り、2人の子どもの行方を必死に捜索していた。約1時間前、黒部市内の9歳の男児と8歳の女児が帰宅しないと、それぞれの家族から届け出があったためだ。
松木さんは真っ暗な歩道に小さな人影を見つける。「遅い時間なのに、2人だけなのかな」。一度は通り過ぎたものの、胸騒ぎがして引き返した。「もしかしたら近くの家の子どもかも」「見えなかっただけで近くに親がいるのかな」――。なかなか声をかけられず、気付けば辺りを3往復していた。
「やっぱりおかしい」。松木さんは意を決して車を止め、窓越しに、「どうしたの?」と声をかけた。すると児童は「散歩しとる」とこわばった様子で返事をした。だがその頃の気温は約13度。男児は上着を羽織っているのに、女児は半袖姿。異変を感じてすぐに車を降り、詳しく話を聞いた。職業柄、子どもたちとの会話はお手の物だ。]
少しの思いやりが人間の命を救うこともある。思いやりの人、思いやりの国でありたい。松木さんは善意のある立派な方だ。