「その時仏、入定して三昧は心身不動なり。この時、天より宝蓮華を降りて仏の上に散じ、および衆会の前、六種に震動せり。」
釈迦牟尼仏は禅定に入っており心身は不動です。ヒラヒラと天より宝の蓮華が降り、皆の集まった地面が六通りに震動したとあります。これはいってみれば地震のことですが、六種震動とは東西南北と上下に揺れることをいいます。ここでは心が真理を聞ける喜びに躍ったという解釈をしたいと思います。なにせ光明心殿ですから地面は我々の心そのものです。こうしたことは法華経でも同じく奇瑞として描かれていますので、ここに我々の知る地震のような禍々しさはありません。
「その時、会中の諸々の大衆は未曾有を得て、歓喜合掌し一心に仏を観たてまつる。その時、仏眉間の白毫相より光で三千世界をてらし見たまえり。」皆々珍しいことであると有難さに歓喜して合掌しました。白毫相というのは仏様の額にあるという白い毛の渦であり、御仏のお体の特徴とされています。仏像ではよく水晶などを埋め込んで表現します。ここから光を放って三千世界つまり世界中を神通力でご覧になったわけです。
「一人の天女あって仏所に来至し礼拝恭敬して仏に申してもうさく。」
すると一人の天女が出現しお釈迦様のもとにいってこう申し上げました。
「我、衆生を観ずるにあるいは先には富貴にて後に貧窮、あるいは先に貧窮して後に富貴、あるいは始終とも富貴、あるいは始終とも貧窮、何の因縁を以てかくの如くなる。我今称計すべからず。」
人々の有様の観ますと先に富んで後で貧しくなる人、逆に先に貧しく迹で富む人、始終貧乏な人、始終裕福な人と様々です。こうした有様は一体どうしたことによるのか私ははかり知ることができません。
「ただ秘するところの神呪の如意宝珠となづけるあり。ただ願わくは世尊、我が呪を聴許したまえ。仏、天女に告げて曰く。我既に聴許す。速疾に演説せよ」
天女はさらに私には如意宝珠という秘密の神呪がありますのでどうぞお釈迦様お聞きくださいといいました。お釈迦様もこれを認めます。