金翅鳥院のブログ

天台寺門宗非法人の祈祷寺院です。

「お接待」


四国遍路ではご修行と言って「托鉢」をします。
家の前で般若心経読む。

すると色々くれる。そういう習慣があります。
でも「お通り」と言われたら止めて次に行くルール。修行遍路なら必ず托鉢修行しないといけないと言われた。
そこでくださるものは「お接待」という。

お布施してくれるものはお金もあれば食べ物もあります。
物でなく車で隣の札所まで乗せてくれるというのもよくある。
でもどんなものでも受ける以上は断ってはいけない。
逆に受けないなら最後まで受けない。
これが接待を受ける側のルール。
 
さて、これは師匠が東京に来てから後年に自分の信者を連れてお遍路をした。その時の話だそうです。
 
たまたま、バスに中でお互いの持っている食べ物を交換してお接待しあいましょうということになった。

そんななか、むいた「ゆで玉子」をもらった人がいた。しかしその玉子が少し潰れていたので何となく嫌だったそうです。

「あら、食べないの。お嫌いですか?」と言われ、とっさに口から出たのが「いやあ、私ね、ゆでた玉子はアレルギーでダメなんです。食べるとおなか壊すんです。ホントごめんなさいね。」というウソ。
それはその場で済んだ。
さてその夜の宿での話。
御膳に「ゆで玉子」が出ました
その人は昼間にバスの中でついた嘘などとうに忘れてそれを食べたそうです。

もともとアレルギーなんか本当はないんですからね。
…そうしたらその夜に猛烈におなかが痛む。もう下痢をしてひっきりなし。
それで、とうとうお遍路の旅からはリタイアすることになった・

お大師さんは目ざといお方。
四国遍路ではそういう課題がたくさん出る。
 
師匠なんかの場合はなんとお遍路していて生のイワシをバケツに山ほどもらったそうです。
いやあ考えただけでもこれは困りますよね。
さりとて捨てるわけにもいかない。グズグズしてたら腐るだろうし。
イワシは俗にいう足が速い魚。
私なんかはくれるほうもくれるほうだと思うけどね。

でも白戸師匠は文句も言わず、そのイワシのバケツ下げて終日歩き、着いた宿ではショウガで焚いてもらい、宿泊の遍路全員にお接待で晩の御膳につけてもらったそうです。
それでみんなに喜んでもらった。
これも大した修行です。

逆に「修行の邪魔」と言って現代人なら断るか、もらっておいてどこかにそっと捨てるかかも知れないけど…。
本当は「修行の邪魔」こそ修行そのものなのです。
必死に歩くのけが修行じゃないですよ。
 
普段から「食べ物を粗末にすると必ず復讐されるよ…」と常に師匠はいっていました。
お正月過ぎてお供えの上に載っていた萎びたちいちゃなミカン。
そんなものも「捨ててはいけない」と廃棄直前にとっておかれた師匠。
そこは私なんかは至って無駄の多いダメ人間だけど、それでも修行者のお精進料理なんか作る時にはなるべく使わない部分がないように作ります。

お野菜なのが即精進料理じゃないよね。
ほうぼう無駄に捨て放題ではどこが「精進」なのかわからないでしょう。
作るのも精進工夫なのが精進料理。
物のもらい方ひとつ。もらったものをどうするのか_?
そこにも修行がある。

気が付けば日常の中でもいつもそれはある。
遍路でなくてもね。
何時でも…。