金翅鳥院のブログ

天台寺門宗非法人の祈祷寺院です。

コロナ不調に十全大補湯だって? 笑わせるよ。   松江堂薬局のブログ

 

「ナントカにはナントカ湯」というふうに短絡的に症状や病名と処方を結びつけるようになったら漢方家としては立派なへっぽこです。

漢方薬紹介のテレビ番組はこの手のが多いので観ていて不愉快になるのでみません。

十全大補湯は《和剤局方》は癌などの大きな手術後に患者さんの体力を回復するためによく使われています。

四君子湯(人参・白朮・茯苓・甘草)という補気剤に四物湯(地黄・芍薬・当帰・川芎)という補血剤を足して4+4で八珍湯。

これに補気作用を強化するために黄耆、気血を生産する力を上げるために肉桂を加え、さらに+2で10になります。

唐時代に公立の薬局の処方薬リスト、和剤局方に収載された気と血を補う名方です。

この処方を使って治療するのは気血不足で、疲労倦怠、食欲不振など気の不足、顔色が白かったり黄色かったり、眩暈がある血の不足に使います。中医学で言う虚証に用いる処方です。

さらに肉桂は温性で体を温めるので、すこし寒がる人にはとてもいいです。逆に疲労感があってものぼせ気味、ほてり気味の人には使うことができません。

このことは方剤学の教科書の使用の注意の箇所に記載してありますが、症状にしか目が行かない日本のへっぽこ医者や薬剤師は中薬学の「寒熱」、四性の重要性を理解していません。

以前アメリカで人参のサプリメントをジムで飲んでいた人が血圧が上昇し動悸が激しくなり人参総合症という病名ができました。補う薬は虚証で使うもので体力のある筋肉自慢の実証が飲めば不良反応がでるのです。

さて、コロナ不調というのはあまりにざっくりした言い方です。コロナ禍での体調不良にはいろいろな病機(体の状態)があります。

うちにあった相談ではコロナ関係のテレビニュースを観ると、怖くなり体が熱くなりいろいろな不定愁訴がでました。これは恐怖から体が緊張してしまい、気の流れが停滞した気鬱です。気が流れるように加味逍遥散を使います。この症例に十全大補を使うと気が停滞している状態で気を補うので、さらに症状は激しくなります。

また将来の不安ことをいろいろと考えていて動悸や精神不安、不眠がでる。寝ていると体がほてる人がいます。これは思慮過多による心陰不足によるもので、心陰を潤す天王補心丹を使います。この症例に十全大補を使うともっと体がほてります。

テレビにしてもユーチューブにしても安直すぎます。

また薬局で十全大補を購入しても1ヶ月2万も3万もしません。1万くらいです。フェークです。医者へ誘導しているような感じを受けました。