実名で書いていいかどうかわからないでかりにy師としよう。
私の周囲の人の古参の方には誰だかすぐわかると思うが・・・。
y師は私と若い頃からの付き合いで修験の大御所だ。そして聖天尊の行者でもある。
この人ほど詳しい人はいないだろう。学者もはだしだ。
古き盟友であり、先生が苦情は一つ上の申年なので兄貴分でもある。
この人は色々と奇瑞のある人である。
一緒に山修行に行ってふもとの駐車場でのこと。
クルマが後ろを見ないでバックしてきてy師は車と車の間に完全に挟まれてしまった。
これはおおごとだ!と思って一同息をのんだが、y師はなんともない。
何と‼ 自動車の方が彼の胴体のかたちにへこんでしまったのだ。
これには驚いた。
これには後日談があり、あまり良い話ではないが車をバックさせていた人間は地元でも極めて評判の悪い者で、謝るどころか、逆に文句言うような調子だったという。
呆れていたら、ほどなくバタッと亡くなった。
別にy師は不快には思ったであろうがそのことを怒りもしないし、なにもしないがそういうことがあったそうだ。
y師を知る人はそれは護法天狗の所作ではないかと皆ささやいた。
実際、最近は控えていると聞くが彼は大酒を好んで体を少しく害していた、だが、山に行くと若い行者も顔負け、すこぶる元気になって護法天狗でもついているかのような印象だった。
またy師は大変遊び上手で粋な人だった。
y師がご自分のお弟子たちと料理屋に行って芸妓を呼んだことがあったという。
そうしたらもうかなり高齢の芸者さんが座敷に呼ばれて来た。
みな、若いキレイどころを期待していたのか、不満げにみえると、y師は
「バカ!芸者というのは70歳からさきがいいのだ。
まことの味がある芸があるのは古参の芸者だ。
コンパニオンみたいな小便くさい芸者が呼べるか ‼」と一喝したと言う。
破天荒に見えて仏護を大きく感じるy師はチベットの伝説の聖者さえ思わせるイメージの人だ。
この人をして豪放磊落。天衣無縫という以外の言葉を私は知らない。