私が初めて入門したとき、師匠はこれからは仏法を学ぶんじゃなくて世俗を学べよといわれた。
どういう意味か皆目解らなかったが今は少しわかるように思う。
貪瞋痴の煩悩を除くのが仏道。
貪らない。愚痴を言わない。怒らない。
だがこれらを徹底したら周囲に人はいなくなるだろう。
人は世俗にまみれた存在が好きなのだ。
だから大乗の行者は貪り深い人と見せて実には貪らぬ。
愚痴を口にしながら実に意に介さない。
腹立つと見せて腹立てず。
菩薩道はそれくらいの器量や工夫がなくてはならないと思う。
若しもそれを見破るものあれば、彼こそはその人を真実知ることになろう。
まさにそれこそ善友である。
また、師匠は味噌の味噌くさきは上味噌に非ずとも言われた。
抹香臭くていかにも聖人ぶった人になるのは修行が足らぬというわけだろう。