長い間、困ることがあるのに祈願できない人がいた。
この人はその相談で見えたが「なぜ祈願せぬ?」と霊狐さんが看破した。
僧侶で祈願できる方なのに自分の問題は祈願してはいけないと思っているらしい。
そんなことはない、何でも遠慮なくまずは頼んでみたらいいのだ。
頼んで罰が当たるのは呪詛くらいのものだ。
しかも、それはそうとう本尊と密な場合だ。
普通は無視で終わる。
例えば、嫌な奴がいたら「殺してくれ」は勿論いけないが「何とかしてください」は一向構わない。方法はあちら任せだ。
それで万一相手がなくなってもそこはあなたのせいではない。業の結果だろう。
まあ、でもそれはまずない。
よほどでない限り円満な解決が99パーセントだ。
話しているうちにご祈願する気になったらしい。
梓霊狐は「人間は分からぬな。ずうずしいのもいれば、こやつのように水くさい奴もいたものよのう。」と笑っていた。