金翅鳥院のブログ

天台寺門宗非法人の祈祷寺院です。

映画「パーフェクト・デイズ」

www.perfectdays-movie.jp

星祭も終わりようやく一息ついて、隣の藤沢市で見たかった映画「パーフェクト・デイズ」を見て帰ってきました。

主人公は東京都の委託で都の野外のトイレ掃除をしている初老の男性

平山

映画は其の日常を淡々と描く。

まさにこの映画は人生はイベントではなく毎日の繰り返しの中にあることを教えてくれる。

人は実は人生のイベントの記憶のなかで生きている。

だから五日前の夜何食べたなど普通は思い出せない。

去年がどんな年だったかもいくつかのイベントの記憶で構成されているだけの極めて貧弱で脆弱なもの。

平山の日常は其の侭に我々の日常だ。

日々がちょっとした嬉しいこと、気になること、嫌なことで構成されている。

折に触れ、空や木々の写真を撮り、昼には神社の境内でお昼を取り、小さな植物をめでる。

1970年代の洋楽をこよなく愛し、カセットで楽しむ平山

彼の日常も我々の日々もシフトを共有する同僚が急にやめてしまったり、馴染みの店のママの意外な過去を知ってしまったり・・・・そんな小さな喜怒哀楽が織りなしている

誰の日々も実際はそんなことばかりで構成されているのだ。

平山さんは奥さんいないの?淋しくないと聞かれても薄笑いするだけの平山。

この男のそうした過去がどうなのかはわからない。

かと思えば、思わぬ珍客の到来で数日台所で不自由に寝泊りする平山だが、その客が去る時は孤独の思いにかられる。

 

人はインパクトある人の訪れがないなら自分がいかに孤独であるかということも忘れているのだ。

 

そしてそれらの体験記憶もまた忘却の彼方に徐々に飲まれていくだろう。

果たしてこの男が死ぬときに心に残っているのは何か?

そしてれわれの心に残るのは?

いままでにない全く新しいタイプの映画だ。一見に値する。